三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、米国で、個人向けのインターネットバンキングサービスを開始します。日本の銀行が全米で個人向け業務を行うのはこれが初めてのことになります。三菱UFJグループの狙いはどこにあるのでしょうか。

写真:ロイター/アフロ

 同社は、1984年にカリフォルニア州の地方銀行を買収し、ユニオン・バンク・オブ・カリフォルニアとして北米業務を続けてきました。同行はその後、MUFGユニオンバンクと改名し、業務エリアを拡大しましたが、日本人の往来が多いカリフォルニアを中心とした金融機関という位置付けは変わりませんでした。

 今回、スタートするのは「ピュアポイント」というネットバンキングのサービスです。MUFGユニオンバンクが事業主体となっていますが、地域はカリフォルニアにとどまらず、全米を対象としており、店舗もテキサスやフロリダなど各地域に分散させています。

 米国では、JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ、シティバンクといったメガバンクに加え、全米に数多くの地方銀行が存在するため参入は容易ではありません。三菱グループの経営体力を持ってしても全米進出は簡単にはいかないでしょう。それにもかかわらず、あえて全米進出を試みていることの背景には、単純に全米に拡大したいだけではなく、別の目的があるとの見方もあります。それはドル資金の確保です。

 トランプ政権の発足で、これまで世界中にバラ撒かれていたドル資金が急速に米国内に戻っています。一方、日本は量的緩和策を継続中で円の価値は下がり気味です。日本の金融市場の国際的な地位が低下していることもあり、このところ邦銀はドル資金の確保に苦労するようになっています。

 今後、米国はドル高と金利高が予想されており、ドル・ベースでの運用ができなければ、金融機関は収益を確保しにくくなります。そのためにはまず先立つもの(つまりドルの現金)が必要であり、ドル資金を確保するための手段がこのネットバンキングというわけです。他行より高めの預金金利を設定すれば、収益は減少しますが、ドル資金は容易に集めることができるでしょう。国内でのドル調達コストなどと総合的に勘案すれば、十分に採算が合うと考えることもできます。

 ドル資金の調達は各行とも苦慮しており、邦銀における今後の大きな経営課題の一つとなるかもしれません。トランプ政権の誕生は、邦銀の海外戦略にも大きな影響を与えそうです。

(The Capital Tribune Japan)