米国のAP通信など、AIを用いた記事生成に取り組むメディアが現れています。国内では、中部経済新聞が歴史を振り返る記事を作成したほか、日本経済新聞が1月から企業の決算情報を要約し、文章化するサービスを開始しました。AI(人工知能)によって作成された記事の著作権は、一体誰のものなのでしょうか。

AI記者が記事を書く時代(上)見えてきたAIの「得手不得手」

著作権に詳しい福井健策弁護士

 著作権に詳しい福井健策弁護士(51)は「AIが記事を完全自動生成したと仮定した場合、著作物にはあたらず著作権は生まれない、というのが現在の通説」とする一方、完全には確定しておらず、どうあるべきかの議論がなされているところだといいます。

 「著作権は基本的に、それが著作物かどうか、次に誰が著作権を持つか、という順で考えます」と福井弁護士。

 AIが作成した記事が著作物にあたるかどうか。著作権法では、著作物を、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義しています(第2条第1項第1号)。よって、AIの記事は、“思想・感情の創作的な表現”にはあたらず、著作物ではない、というのがこれまでの通説だと説明します。

 人間の記者が書いたからといって、すべての記事が著作物にあたるわけではありません。著作権法では、“事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、前項第一号に掲げる著作物に該当しない”としています(第10条第2項)。たとえば、人事や訃報などの記事が相当します。

 前回の記事「見えてきたAIの『得手不得手』」に登場した日本経済新聞の「決算サマリー」サービスで作成された文章について、同社は「著作物には該当しないと考えています」とする一方、無断で流用されないなど一般的な権利は自社に帰属するとしています。

 福井弁護士も、現在の通説に従えば決算サマリーの文章は著作物にあたらないとしますが、仮に日経が決算サマリーの著作権を主張したとしても、「世界的にはまだ完全に確定しておらず、新聞社が著作権を主張すること自体はありうる話」とします。

 決算サマリーと同じ文章を人間の記者が書いた場合、それでも著作物とみなされない可能性は高いと言います。「言い方を変えれば、今AIが作れる記事は、人間が作っても著作物にあたるかどうかギリギリのものが多いと思います。そこまでの独創性を発揮できていませんから」。

 これに対して、中部経済新聞がAIを使って作成した創刊70周年の記事は、「人間が書けば間違いなく著作物。もし、このような記事をAIが本当に完全自動生成したのなら、著作物ではないか、という見方も出てくるかもしれません」。

 今後の議論を経て、AIの記事に著作権がある、と認められた場合、著作権者としては、(1)AI開発者、(2)学習用データの提供者、(3)AIに学習させた人、(4)ユーザー(AIを使って記事を生成させる指示をした人)、が候補として考えられるそうです。