[イメージ]アカゲザルの親子。ニホンザルとアカゲザルの交雑種はなぜ処分されたのでしょうか(写真:アフロ)

 2月、千葉県富津市の高宕山(たかごやま)自然動物園でサル57頭が殺処分されたという報道がありました。同動物園ではニホンザルを飼育していましたが、この57頭は外来種であるアカゲザルとの交雑種であったことがDNA検査の結果、明らかになったため、特定外来生物法に基づいて駆除した、というのが理由です。

 東京都も、伊豆大島のキョン対策として新年度約4億円の予算を計上し、根絶を目指すなど、全国の自治体は増え続ける外来生物に対し、同様の取り組みを実施しています。なぜこのような殺処分に多額の予算がかけられるのでしょう。そして、保護される生物のために、排除する生物を設けるという対策は本当に適切なのでしょうか。

 交雑種サルなど外来生物に対する駆除政策が内包する課題を、環境政策論・環境社会学が専門の龍谷大政策学部・清水万由子准教授が「千葉県高宕山自然動物園における交雑種サル駆除は何を問うているのか」と題して、整理します。


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なぜ、57頭のサルは殺される必要があったのか

1. はじめに

 2017年2月20日、千葉県富津市はニホンザルを飼育する高宕山自然動物園の全164頭をDNA鑑定した結果、57頭が外来種であるアカゲザルとの交雑によって生まれたサルだったことが明らかになったと発表した。57頭の交雑種サルは、特定外来生物法に基づき殺処分されたことが報じられた(*1)。

 なぜ、57頭のサルは殺される必要があったのか。

 結論を先取りして言えば、有害な影響を与える外来種は排除し、日本に特有の在来生物は保護するという制度に則って、今回の処分は行われた。

 しかし、回避すべき「有害な影響」とは何か、「日本に特有の在来生物」がなぜ保護されるべきなのかは、この日本社会において自明なことだと言えるだろうか。

 次々と新しい外来生物種が登場し生息域を拡大する中で、国際的にも国内的にも法制度の整備が進む一方で、その根拠を問う社会的議論は後回しにされがちである。

 本稿ではこの問題が私たち人間と自然の倫理に対する問題提起を内包していることを指摘したい。