スギやヒノキを花粉の少ない品種に植え替えて、花粉の発生源減少をめざす東京都の「花粉が少ない森づくり運動」。2006年度に開始されましたが、2015年度までの10年間で、植え替えが済んだスギ・ヒノキ林の面積は全体の1.6%程。現状のペースだと完了までにあと約600年かかる計算です。東京都は「たとえ予算が2倍になっても、植え替え面積は2倍にならない」としており、進捗を大幅に早めるのは困難なもようです。

スギ林と花粉の飛散(提供:東京都)

 2015年4月1日現在で、東京都のスギ・ヒノキ林の総面積は、都内森林面積の約40%を占める3万866ヘクタール。このうち約95%(2万9215ヘクタール)を占める多摩地域のスギ・ヒノキ人工林が同運動の対象です。

 同運動では、都側が、スギ・ヒノキ林の所有者から立ち木を1ヘクタールあたり平均約80〜100万円で購入します。木は、都側が伐採、搬出して販売。伐採後は花粉量が従来の1%以下という少花粉品種の苗木の植林や、約20〜30年におよぶ下草刈りや間伐などの保育・管理にかかる費用も負担します。木の伐採から販売までは民間の林業事業者が行い、植林以降の費用を都側が負担するケースもあります。

 木の購入や伐採、保育・管理などの実務は、都の外郭団体である東京都農林水産振興財団が手がけます。要する費用は年間約5億円。都の「花粉の少ない森づくり基金」や補助金によってまかないます。

 2006年度から2015年度までの10年間で、少花粉品種を植林した森林の面積は477.2ヘクタール。多摩地域のスギ・ヒノキ人工林全体のうち約1.6%にとどまります。年平均約48ヘクタールとすると、すべての植え替えにはあと約600年ほどかかる計算になります。西暦でいえば、2610年代にようやく完了するかどうかです。

進まない原因とは?

植栽の様子(提供:東京都)

 遅々として進まない原因の1つには、木材市場の需給バランスを崩さないよう配慮が求められている点があげられます。同運動で伐採した木は、都内唯一の原木市場である多摩木材センターで販売しています。2015年度の同センターの原木取り扱い量は1万4533立方メートル、うち同運動の原木は約70%の約1万267立方メートルを占めています。同運動による木材の供給量を大幅に増やせば、木材価格が暴落する可能性もありえます。

 人材不足も課題です。国内林業の低迷が続くなか、林業で働く人々が減少。多摩・島しょ部では1960年度に2165人だった林業従事者が、50年後の2010年度には380人と約6分の1近くにまで減少しています。都の年間植え替え目標面積は60ヘクタール。現状で仕事を依頼できる林業従事者の数を考えると、これが妥当な数字だそうです。

 産業労働局では、今後も運動を継続しつつ、多摩地域の林業の活性化によって民間事業者の力で自律的に少花粉品種への植え替えが進む状況を目指したい考えです。都立学校など公共施設への多摩産材利用の促進などによる需要拡大や、林業従事者の人材育成などにも平行して取り組みます。