足立全康(ぜんこう)は、日本画家、横山大観の作品を愛し、収集しました。足立が創立した島根県にある足立美術館ではそのコレクションが見られます。そんな大観好きの足立が、一度だけ目先の利益に惑わされ、洋画の投資に手を出して痛い目にあってしまいます。

 優秀な秘書の助言や祖父の教えに背いた結果どのようなことが起こったのでしょうか? 足立の大失敗の結末とその後も続く大胆な投資手法について、市場経済研究所の鍋島高明さんが解説します。

  洋画ブームにのって大失敗

 足立全康は1957(昭和32)年、初めて横山大観の「杜鵑」(ほととぎす)を購入して以来、日本画の収集に徹してきたが、1975(昭和50)年頃洋画ブームが沸騰するのを間近にみて、いたたまれなくなる。そして洋画の収集に突き進む。周りの反対を押し切り、金に糸目をつけずに買いまくる。足立が絵画投資では全幅の信頼を置く秘書の服部律に相談すると、彼女はキッパリ反対だという。その時の2人の会話を自伝『九十坂越えてますます夢ロマン』から再現する。


 足立「ワシはこれまで日本画一本でやってきたけど、洋画ブームを対岸のこととしてみすみす見逃すのはもったいない。ワシの見るところでは、まだまだ値上がりする。これは絶対の投資になると思うんやが、どうやろうか」

【連載】投資家の美学