ランキング5位に復帰した錦織圭はバルセロナからクレーコートシーズンに突入する(写真:Splash/アフロ)

 世界ランキング5位に再浮上した錦織圭の欧州クレーコートシーズンは、今年もスペインのバルセロナ(4月24日開幕)で始まりを迎える。
 世界1位のアンディ・マリーや同2位のノバク・ジョコビッチらをはじめ、多くのトップ選手が出場するモンテカルロ・マスターズを見送るのも、例年通りのスケジュール。これは錦織が、3月末のマイアミ・マスターズからバルセロナ・オープンまでの3週間を、貴重なトレーニング期間として設置しているからである。

 4月中旬に始まり、5月28日開幕の全仏オープンを一つの終着点とするクレーコートシリーズは、錦織のように欧州以外を拠点とする選手にとっては、ホームから遠く離れた過酷なロードだ。出場大会や勝ち上がりによっては7月のウィンブルドンまで続くこともあり、その場合は約3カ月もの遠征となる。旅慣れたテニス選手たちとはいえ、長期のホテル暮らしとなれば、やはりストレスを抱え込む。あるいはスペイン語やフランス語が話せなければ、コミュニケーション面でも不都合を覚えることも多い。小さな不便の積み重ねは、オンコートでのパフォーマンスにも決して小さくない影響を及ぼす。

 なにより、トーナメントで常に上位進出し試合数のかさむトッププレーヤーたちにしてみれば、遠征とは、フィジカル面の貯金を切り崩しながらの旅路でもある。ひとたび連戦……それも拠点から遠い地に出向けば、筋力強化の必要性や身体の痛みを感じたとしても、腰を据えてトレーニングや治療に取り組む時間や環境がない。だからこそ長くホームを離れる前には、十分な練習とトレーニング期間を設け、広げたタンクにエネルギーを満タンに入れてから旅に出ることが重要になる。

 今回の錦織の場合は、マイアミで痛めた右手首を癒し再発を防ぐことも、この時期に取り組んでいる課題の一つだろう。逆に言えば2014年以降の錦織が、バルセロナで3年連続決勝進出、その後のマドリード・マスターズでも準優勝一度、ベスト4が二度という高値安定の戦績を残しているのは、欧州に旅立つ前の3週間を有効活用してきたことの証左だ。
 また最近の錦織は、次のステージに上がるために必要な鍵を「メンタル」だと繰り返し明言している。そのメンタルを強化する教材は「試合から学ぶことが一番」であり、それらを持ち帰り「コーチたちと振り返る」のだと錦織は言った。

 「どういう気持ちだったか、どういう心の持ち様でやればよかったかというのをコーチとしっかり話し合う」ことで戦いに備える彼にとり、戦いの場に向かう前の一定の期間は、思索を整理するうえでも欠かせない日々だ。
 

この記事が気に入ったら「いいね!」をお願いします