編集者はJ.T.リロイに作品を書かせたかった

 J.T.リロイ名義で出版されたのは、デビュー作の自伝的青春小説『サラ、神に背いた少年』、短篇連作小説『サラ、いつわりの祈り』、サンフランシスコでペットのかたつむりと暮らす若い男娼の自伝的小説『かたつむりハロルド』。J.T.を名乗る前のローラは太っていた。そんな自分を嫌い、嫌いな自分を前面に出すくらいならアバターを立てることを望んだ。そしてアバターに美少女ではなく、性的虐待を経験した美少年を選んだことは、彼女の描く小説の世界を一層魅力的なものにした。

 ローラはまず性的虐待を受けた少年として「自殺防止ホットライン」に電話をかける。J.T.の最初の読者は親身に“彼”を受け止めたここの精神科医だ。次いで編集者。続いて、多くのクリエイター、読者がJ.T.の世界観に魅了されていった。アバター(=J.T.)は、社会的ポジションを得て、ローラの思惑を超えて、勝手に恋をし、作家であることを忘れ、セレブになっていく。

――J.T.リロイを最初に発掘した編集者も映画の中で、「セレブの仲間入りをさせたいのではなく、“作品を書かせたい”のだ」とおっしゃっていましたね。そう考えると、紆余曲折を経て、いまあらためて本来の作家生活をスタートさせたといえますね。

ローラ:不安なのは、どうやって日本で得たこの感じをアメリカに持ち帰ろうかということなんです。アメリカには本当に愚かな人たちがいっぱいいます。例えば、トランプを良しと言っているような人たち。でも彼ら以上にどう捉えていいのかわからないのは、私を攻撃する人たち。なるべく無視しようとは思いますが、どうしても耳に入ってきてしまう。彼らが私を攻撃する理由はたくさんあります。もしかしたら私が成功したことに嫉妬しているのかもしれないし、(J.T.に)性的に興奮していたのかもしれません。理由はいろいろあると思いますが、彼らは自分の思いに正直ではありません。自分を正当化して、「あいつは嘘をついていた」と言います。

 日本での感覚を覚えていられるように、一生懸命記録しています。写真を撮ったり、録音したり。一生懸命記録して持って帰ろうと思っていますが、すぐに褪せてしまう。本当にここで起こっていることは魔法のよう。アメリカとは考え方が違う国なんですよね、日本は。

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