ゴキブリはメスだけで集まるとオスなしで活発に卵を産むという、北海道大学の加藤巧さんらによる研究グループによる発表が先月、話題になりました。実験に使われた「ワモンゴキブリ」はオスがいる場所では通常の生殖、オスがいなければメスだけで生殖するのですが、メス3匹を一緒に飼うとより活発にメスだけで生殖するというのです。一般にはオスとメスで子孫を残す(有性生殖)生き物が、メスだけで子孫を残すことを「単為生殖」といいます。メスだけで増えるって、一体どういうことなのでしょうか? 今回の発表のポイントは何なのでしょうか? 他の生き物でも単為生殖が行われているのでしょうか? そしてそもそも何のために単為生殖するのでしょうか?

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そもそも「男と女」は何のため?

 そもそも、人間を含めてほとんどの生き物にはなぜオスとメスがいるのでしょうか?生きていくだけでも大変なのに、何のために多大な労力をかけて相手を見つけなければならないのでしょう?

 これは、一言で言えば子孫に遺伝的多様性をもたらすためです。私たち人間の個々人がそうであるように、生き物の個体それぞれが持つ遺伝子の組み合わせにも長所と短所があります。しかも、環境が変化すれば長所が短所になり、短所が長所になることも充分ありえます。例えば人間の太りやすい体質の遺伝子は、飽食の時代には生活習慣病になりやすい体質として不利に働きますが、食べ物に乏しい環境では飢餓に強い体質として有利に働くでしょう。無数にある遺伝子の組み合わせに、「絶対的な正解」はなく、正解は環境の変化によって常に変動している以上、保険のために子孫に様々なバリエーションを持たせた方が得策、というわけです。

メスだけで増えるメリットは?

[図]有性生殖と単為生殖の長所と短所

 さて、本題の単為生殖の話に移りましょう。保険のためにパートナーを探すコストをかける戦略が有性生殖だとしたら、単為生殖は保険料を払わずにすべてのリソースを繁殖に費やすという戦略ということができるでしょう。本来なら異性を惹きつけたり、同性のライバルと競争したりすることに使うリソースを、すべて子孫を作ることだけに使えるので、有性生殖に比べて圧倒的な繁殖力を発揮できます。

 単為生殖にも幾つかのパターンがありますが、ゴキブリの仲間には、自分とまったく同じ遺伝子をもつ子ども、つまり自分のクローンを産むものがいます。 親のゴキブリは生き延びて子どもを作れる年齢になれたのですから「現在の環境においては、すでに性能が保証された(自分と同じ性能の)」子孫を産むことにもなります。単為生殖のアドバンテージは「短期的には性能が保証された子孫を大量生産できる」ことなのです。

 そして必然的に、短所は「短期的には」というところにかかってきます。現在どんなに成功を収めているクローンでも、その弱点を突くような環境の変化、例えば急激な気温の変化や特定の病原体の蔓延などによって、あっという間に全滅してしまうリスクがあるのです。

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