小笠原は松尾主審にも報告し、「森脇選手と話す」という言質を得たという。鹿島のフロントも試合を管轄するマッチコミッショナーの大澤隆氏に「浦和の選手からの暴言があった」と報告したが、浦和側の当事者である森脇は差別的な発言を浴びせたことを真っ向から否定する。

 両チームの選手のなかで最後に取材エリアに姿を現した31歳は「非常に悲しんでいるというか、大きなショックを受けています」と、小競り合いの状況をこう説明した。

「興梠選手が鹿島の選手といざこざになって、何人かによってたかられたときに、興梠選手を守ろうという思いで輪のなかに止めに入ろうとしたんです。そのときに小笠原選手から『お前だけは入ってくるんじゃねえ、ボケッ』という感じで言われたので。
 僕も『うるせえ、ボケッ』という感じで返して。そこから鹿島の選手が3、4人、小笠原選手も加わって僕に詰め寄っていろいろ言ってきたときに、僕の顔に小笠原選手のツバが飛んできたので『口が臭いんだよ』と。子どもじみた喧嘩のようで申し訳ないし、恥ずかしいんですけど、そういう発言をしました」

 昨シーズンのチャンピオンシップ決勝で死闘を演じた宿命のライバル同士ということもあって、試合は開始早々からヒートアップ。前半24分に鹿島がFW金崎夢生のゴールで先制し、ホームの浦和が追いかけようにも、鹿島が築く厚い城壁を崩せない状態が続いた。

 白熱する対決モードが小競り合いを介してピークに達し、そこで森脇が発した「口が臭いんだよ」という言葉が、予期せぬ方向へ独り歩きしてしまったのか。過去に別の選手に対しても同様のことを言っていたと指摘した小笠原の発言を聞くと、森脇は「嘘でしょう」と、不快感すらにじませた。

「その事実を聞いただけで、僕は彼(小笠原)の人間性にショックを受けているというか。なぜ皆さんの前で言うのか。僕はちょっと理解できないというか。試合中にカッとなって、子どもじみた変な発言はするかもしれないけど、誰かを侮辱するような発言はいままで一度もしたことはありません」

 マッチコミッショナーの大澤氏は両チームから話を聞いたうえで、24時間以内にこの一戦に関する報告書を作成してJリーグに提出。最終的にはJリーグ側が問題の有無を判断する。

 試合は鹿島がそのまま逃げ切り、暫定ながら今シーズン初めて首位に立った。大観衆による素晴らしい応援が交錯するなかで、意地とプライドが真っ向からぶつかり合った白熱の首位攻防戦。地上波のNHK総合でも生中継された90分間は画竜点睛を欠く形で、後味の悪さだけが残ってしまった。

(文責・藤江直人/スポーツライター)