柴田勝頼はこのあと4月の興行で試合後に硬膜下血腫、緊急手術のアクシデントに見舞われた。父親は元レスラーでレフェリーだった、いまはなき柴田勝久さん。新日プロを初期から支えた功労者だ(撮影:志和浩司)

 ブーム再燃というキーワードが浮上するなか、選手の負傷続出というピンチに見舞われているプロレス界。業界の国内最大手団体である新日本プロレスで、3月に本間朋晃が中心性頸髄損傷、4月には柴田勝頼が硬膜下血腫。リング上の攻防は、人気上昇に比例するように危険度の高さを極めつつある。この傾向に、レスラーやファンの間でも憂慮する声が出ている。危険を回避した新たなスタイルは生まれるのか? プロレスはどこへ行くのか?

【写真特集】プロレスはどこへ行く? 真剣勝負とショーの狭間で

イケメン選手の活躍がめざましい近年のプロレス。棚橋弘至も気がつけば40歳、けっして若くはない(撮影:志和浩司)

 戦後、力道山によって本格的に産声を上げた日本のプロレス。その歴史は、隆盛と危機の無限ループでもある。遺恨を残した力道山×木村政彦戦後の八百長騒動、絶対エース力道山の死と日プロ崩壊、PTAによるワースト番組入り、格闘技ブームの到来など、プロレスを脅かすようなピンチは、程度の大小はあれど数多くあった。しかしその都度、馬場・猪木時代のスタート、社会現象とまでいわれたタイガーマスクブーム、格闘技ブームの洗礼を受けた後の昨今の新たなプロレス人気など、まるでゾンビのような生存能力(?)でよみがえり続けてきた。

限りなくショーに近い真剣勝負であると同時に限りなく真剣勝負に近いショー

1月8日、後楽園ホールで行われたWRESTLE-1の興行。黒潮イケメン二郎の空中技。彼は福山雅治のナンバーで入場、会場はイケメンコールでノリノリだった(撮影:志和浩司)

 「リング上の危険度が上がってきたのは、いまに始まったことではない。とくに平成に入ってからは顕著です。ハヤブサ選手が技を失敗し頚椎損傷、半身不随になったのは有名。ほかにも類似の大事故はある。そのたび、レスラーをはじめ古くからの関係者は『最近のプロレスは危なくて見ていられない』と漏らしていたものです。三沢光晴選手やプラム麻里子選手の死亡事故は、過激なファイトの連続で長年蓄積されたダメージが原因といわれています」と話すのは、元プロレス雑誌編集者。

男女が同じリングに上がることも最近は珍しくない。この興行では男女のみならずセコンドに宇宙人が……(撮影:志和浩司)

 技の攻防や駆け引きを見せるプロレスは、限りなくショーに近い真剣勝負であると同時に限りなく真剣勝負に近いショーでもある。突っ込もうと思えば突っ込みどころ満載なのだが、そこにプロレスの何でもアリの魅力があるのも否めない。

2017年1月27日、新木場1stリングで行われた小波プロデュース興行は、プロレス通でもある作家・山口敏太郎が監修。最後は選手、観客全員が会場の外でUFOを召還(撮影:志和浩司)

 「誤解を恐れずいえば、演劇空間に近いものがある。プロレスラーには常に体を張った演技が求められるが、最近はそのさじ加減を誤っているのかも。会場で宇宙人を召喚するというバラエティー番組のような興行もあるが、リング上の激しさはやはり本物。男女が同じリングに上がることも珍しくない。プロフェッショナルなショーは危険と表裏一体だが、そのぶん万全の安全管理が考慮される。絶えず真剣さとショーとして見せる部分が同居するプロレスならではの悩みかもしれません」とは元プロレス団体関係者の話だ。

カップルで観戦する姿や、最近ではおひとり様で観戦する女性ファンも。カッコいい選手が台頭、プロレス会場はすっかり明るく楽しくなった(撮影:志和浩司)

 今年1月、新日本プロレスの興行を観戦したというスポーツ紙記者は話す。

 「技の名前も知らない若いファンが、リング上のカッコいい選手たちが放つ技の一つ一つに、身をよじりながら盛り上がる。ライブ会場のようなノリです。それを、これ以上危険な技で盛り上げるのではなく、別の要素で盛り上げることを真剣に考えていかなくてはいけない段階に差し掛かっているのでは」

1月4日、新日本プロレスの東京ドーム大会。レインメーカー、オカダ・カズチカの入場では“カネの雨”が降る。もちろんお札は本物ではないが(撮影:志和浩司)

 ゾンビのようによみがえるプロレス。次なる新形態はいつ登場するのか?

(文・写真:志和浩司)