梅沢富美男(撮影:たなかみえ)

 大衆演劇「梅沢劇団」3代目座長を務める梅沢富美男は、独自に習得した女形の美しさから「下町の玉三郎」と呼ばれ、人気役者の地位を不動のものにした。

 近年はバラエティー番組にも多数出演し、痛快な毒舌コメントで幅広い世代を楽しませている。強烈なダメ出しで笑いを誘う一方、厳しい芸の世界で生きてきた梅沢の発する言葉の数々は、言いたいことが言いにくい世の中で多くの人たちの思いを代弁しているとして共感の声も聞かれる。

 各方面から引く手数多の梅沢は、20日公開の映画『夜に生きる』(ベン・アフレック監督・主演)のサポーターを担当する。父親との確執からギャングになることを決めた主人公の生き様を描いた同作を通して、自身の芝居に対する考えや家族について語ってもらった。さらには、梅沢が心の底から語る「尊敬」の気持ちを抱かせた大女優と期待の若手俳優とのエピソードも紹介する。

日本でいえば、人情芝居ですよ

ーー同作でいちばん心に残っているのは誰ですか?

梅沢:主人公の父親役を演じたブレンダン・グリーソンですかね。息子がギャングで親父は警察官。そのうえ頑固と来ている。その親子があるとき酒場で出くわすんです。息子は、恋人であるマフィアのボスの情婦を連れています。

 日本でいえば、人情芝居ですよ。例えば、娘が親父に彼を紹介する。しかし親父は「お前に似つかわしくない相手だから付き合うな」と言うわけです。そうなると、大いに反発する。恋は盲目ですからね。そのときは親父の言うことなんてわかるはずはありませんが、後になって理解するわけです。この映画では、そういう芝居を描いているんですよねぇ。

 脇役がいい芝居をできるのは主役の力が大きいですから、そういう意味では、主役を演じたベン・アフレックも素晴らしいですよね。

脇役に上手に食われてこそ主役

(C)2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED.

ーー 脇役がいい芝居を演じられる「主役の力」とは?

梅沢:芝居の基本を語ることになりますが、脇役に上手に食われるのがいい主役だと思うんですよ。

 映画というものが現れてから現代に至るまで、刑事でもギャングでもどんな役でも、主役は死なないじゃないですか。死んでしまったらそこで映画が終わっちゃいますよね。それはテレビドラマでも、舞台も同じです。突然爆発が起こったり、バンバン拳銃で撃ちあいになったりしても、周りはみんなが撃たれても生き残るから主役なんです。

 そうなると、主役ばかりをたてる映画なんておもしろくありません。だから助演賞があるわけですよ。いかに主役が良かったかで、助演賞がもらえるかどうかが決まるんです。あっちにフラフラ、こっちにフラフラしながらも、最後にすっと立ち上がる。そういう芝居をベン・アフレックが上手に演じているということでしょう。

 脇役がいい芝居をしているときに、「僕もがんばっていい芝居しよう」などと虚勢を張ると、その芝居はだめになっていくんです。彼は、その辺が非常に上手だと思います。

 彼がうまく食われているから、脇役である父親、信頼する戦友、彼を取り巻く3人の女性も実に上手に見えるんですよ。