2014年6月に名古屋で上演された「アリスインクロノパラドックス2014」(撮影:志和浩司)

 果たして演劇なのか、アイドルのイベントなのか。女性アイドルや若手女優でキャストをほぼ固めたガールズ演劇が近年、一つのジャンルとして定着している。うまく行けば演劇の可能性を、アイドルの可能性を、広げることができる。しかしその裏には難しさもある。ガールズ演劇の未来は?

写真中央は名古屋・大須を拠点とするアイドルグループ・OS☆Uの高橋萌(撮影:志和浩司)

 業界のトップランナーといえるアリスインプロジェクトは、2010年から女性アイドルを集めてSFファンタジーをメインに舞台を上演してきた。2カ月に1作以上というハイペースで、舞台のみならず映画製作の実績もある。特徴的なのはキャストや作家、演出家を固定せず、公演ごとほかの劇団とのコラボレーションでカンパニーを形成していることだ。稽古場も公演にあわせて借りる。

 2014年6月には、初めて地方に進出。「アリスインクロノパラドックス2014」(演出:宮谷達也)を名古屋の演劇組織KIMYOとコラボし、やはり名古屋に拠点を置く劇団うりんこのホームシアターで上演。OS☆Uはじめ、地元のアイドルグループからキャストが集められた。以後、毎年恒例となり、大阪や札幌などにも地方公演を拡大。昨年春にはついに海外進出も果たし、人気の演目「戦国降臨ガール・インターナショナル」(演出:まつだ壱岱)を香港・同流黒盒劇場で上演した。同作は戦国時代の武将の魂を降臨させることのできる女の子たちの戦いを、華やかなアクションで描くもの。言語がネックになる中、セリフを極力排し、プロジェクションマッピングなどの映像技術を活用、ミュージカル要素を強化することで言葉の壁を超え、公演を成功させた。

名古屋の名東区八前にある、うりんこ劇場(撮影:志和浩司)

 ほかにもガールズ演劇に着目し、公演を行っているカンパニーはあり、既成の劇団がアイドルの集客効果をねらって主要キャストに起用するケースもある。

 もちろん、華やかな面ばかりではない。ガールズ演劇ならではの難しさはある。女の子たちはふだん学校やバイトなどと掛け持ちで自分が所属するグループの活動をしている子も多く、ただでさえ忙しい。ところが演劇の場合は、どうしても稽古への出席が不可欠。一つの公演を行うのに1カ月以上は稽古を積む必要がある。稽古期間の前半は、代役を立てて対応するなど、欠席日が多少あっても融通はきくが、さすがに本番前の通し稽古が始まってからは、1日でも欠席があるとほかの出演者にも迷惑をかけてしまうことになる。

 ところが、舞台経験のないアイドル運営側にはその辺りの事情が今ひとつ理解されていないことが多く、事務所とスケジュールをめぐり調整が必要になる局面も少なくない。逆に、それがわかっているがゆえに、オファーがあっても断るアイドル運営も多い。公演を作るに際しての序盤最大の難関が、このキャスティングだ。

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