明治時代中期の「新年の挨拶」写真(筆者所蔵)

 日本人のあいさつに欠かせないお辞儀は、その習慣のない外国人にとっては、何とも奇妙で、面白い動作に見えるようです。外国人観光客のお土産用に作られた彩色古写真(こしゃしん)でも、お辞儀の姿が撮影されたものは大人気でした。日本独特のお辞儀の習慣について、当時の外国人たちはどのように思っていたのでしょうか。大阪学院大学経済学部教授 森田健司さんが解説します。


  日本人の礼儀の象徴=お辞儀

   奈良公園の鹿たちは、鹿せんべいが欲しいときにお辞儀をする――少し前、外国人旅行客の中で、こんな話が広まった。そして、頭を下げる鹿を実際に見た多くの旅行客が、「さすが、日本の鹿はお行儀がよい」というような言葉で称えている様子が、テレビでも繰り返し流された。

 実際は、鹿のお辞儀のような動作は「威嚇」であって、「早く鹿せんべいを置いて去れ、というメッセージを発するため」だという説が有力なようだ。それが本当だとしたら、ちょっと夢のない話ではある。それにしても、この話からは次のことが言えるだろう。それはすなわち、現代の日本も「お行儀がよい」国と認識していて、お辞儀という挨拶をその象徴と見ている外国人が決して少なくない、ということである。

 冒頭に掲げた写真は、明治日本を代表する写真家の一人、日下部金兵衛(くさかべきんべえ・1841-1934年)撮影の彩色写真である。スタジオ撮影が不思議な空気感を生み、なんとも幻想的な一枚に仕上がっている。

  

【連載】古写真で知る幕末・明治の日本

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