[写真]大きな口が特徴のメガマウス(ロイター/アフロ、2002年4月撮影)

 希少な巨大ザメである「メガマウス」が先月末、日本近海で相次いで見つかり、捕獲されました。1例目は5月22日。千葉県館山市沖で、体長5.4メートルのメガマウスが定置網にかかり、保護されていましたが、残念ながら翌日に死んでいるのが確認されました。2例目は5月26日。三重県尾鷲市沖で、体長5メートルのメガマウスが巻き網にかかっているのが見つかり、近くの港に運ばれた後、その日の夜に沖へ放流されました。

 海に囲まれ、世界で一番強い海流である黒潮が流れる日本に訪れた大きな“珍客”。いったいどんな生き物なのでしょう。千葉の個体はなぜ死んでしまったのでしょう。

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大きな口でプランクトン飲み込む?

[図1]プランクトンを食べるメガマウスザメ(想像図)。メガマウスザメが初めて見つかったのは1976年。それ以来100例程度の報告があったが、死体で見つかることが多いため、行動や生態には不明な点が多い。成長すると全長5メートル、体重1トンを超える。口が大きく上下の顎には細くて小さな歯が約50本ずつある

 メガマウスザメのメガは「大きい」、マウスは「口」の意味です。メガマウスザメはその名の通りとても大きな口をしています。その口を漁師の網のように大きく広げて、海水ごと動物プランクトンを飲み込んでいると考えられています。過去に見つかったメガマウスザメの胃袋からは動物プランクトン(エビに近いオキアミの仲間やクラゲなど)が見つかっています。同じようなライフスタイルをもつウバザメが冷たい海で暮らすのに対して、メガマウスザメは熱帯から温帯の比較的暖かい海に分布しています。餌である動物プランクトンを求めて夜は浅い場所、昼は深い場所へと移動することも分かっています。

[図2]食卵の概要。成熟したメスでは子宮内に大きな未受精卵が数多くみられる(若い未成熟のメスでは卵のもとになる小さな卵母細胞のみ)

 魚の多くは、小さな卵をいっぱい産んで一度の繁殖でたくさんの稚魚が生まれてきます(成魚になるまで生き残れるのは数匹です)が、産む卵や稚魚が大きく、その代わり数は少ないタイプの魚もいます。サメの仲間にはこのタイプが多くいます。さらには、卵ではなく子ザメとして産まれてくる種類もいます。

 メガマウスザメはどうかというと、過去に捕獲された個体を調べた結果、子ザメが産まれてくるタイプと考えられています。それだけでなく、どう猛なサメとして知られるホホジロザメと同じように「食卵」を行っている可能性もあることが分かってきました。食卵とは、お母さんのお腹(子宮)の中でかえった子ザメがほかの卵を食べて育つという繁殖方法です。人間のお母さんは、胎盤を通して赤ちゃんに栄養を与えますが、食卵を行うサメたちは、胎盤ではなく卵という形で赤ちゃんに十分な栄養を与えるのです。この方法をとっているとすると、1回の繁殖で産まれてくるメガマウスザメの子供の数は少ないと考えられます。

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