激戦となった男子100mを制したのは18歳のサニブラウン(一番右)多田(中)は2位、桐生(左)は4位に終わる写真:YUTAKA/アフロスポーツ

 誰が勝つのか!? かつてないほどのワクワク感が日本選手権の男子100m決勝には渦巻いていた。ロンドン世界選手権の参加標準記録(10秒12)を突破した5人のスプリンターは静かに“勝負のとき”を待つ。10秒01の桐生祥秀(東洋大)、10秒03の山縣亮太(セイコー)、10秒06のサニブラウン・ハキーム(東京陸協)、10秒08のケンブリッジ飛鳥(Nike)、10秒08の多田修平(関学大)。史上最高レベルの激戦を制したのは18歳のサニブラウンだった。

 レース当日に21歳を迎えた多田が飛び出すと、サニブラウンも好スタートを切る。中盤以降は最年少スプリンターの独壇場だった。長いストライドを生かして、グングンと加速。意外な大差をつけて、サニブラウンが真っ先にフィニッシュラインを駆け抜けた。

 大粒の雨に「9秒台」は阻まれたものの、自己ベスト&日本歴代6位の10秒05(+0.6)をマーク。2位は多田で10秒16、3位はケンブリッジで10秒18。桐生は10秒26の4位に沈み、個人種目でのロンドン世界選手権出場は絶望的になった。右足首の負傷で調整が遅れていた山縣は10秒39の6位に終わった。

 100m日本記録保持者で日本陸連の伊東浩司強化委員長は「ハキーム君が強い。その一言に尽きるかなと思います」と新王者になったサニブラウンを高く評価して、「前日の条件なら9秒台が出ていた」と気象条件を残念がった。そして、「旬を取り損ねると難しい。一気に9秒台へ駆け上がってもらいたい」と話していた。

 筆者は今回の日本選手権で男子100mが、新時代に突入したと感じている。

 近年、100m「9秒台」の重圧を真正面から受けてきたのが、2012年ロンドン五輪の100m予選で10秒07(+1.3)をマークした山縣と、2013年4月の織田記念で10秒01(+0.9)を叩きだした桐生のふたりだ。

上記の好タイムを出したとき、山縣は20歳(大学2年)、桐生は17歳(高校3年)だった。まだまだ若く、将来性は十分にあった。その後、ふたりは何度も10秒0台のタイムを刻み、スプリンターとして確実に成長を重ねてきた。しかし、9秒台には届いていない。それどころか、記録の価値を考えると、ふたりは世界からじわじわと引き離されている。

桐生が10秒01をマークした2013年。その年の世界ランキングは19位だった。昨年、桐生は再び10秒01の自己タイで走っているが、2016年の世界ランキングは30位だ。ちなみに伊東浩司が1998年に10秒00のアジア記録(当時)を樹立したとき、その年の世界ランキングは11位だった。当時、9秒台のスプリンターは歴代で26人しかいなかったが、現在は123人を数える。
 

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