私たち市民にできることは何だろう?

 小惑星衝突が他の自然災害と異なるのは、滅多に起こらないけど、一度起こると手に負えない大惨事になりかねないという点です。小惑星の衝突を回避できるように、あらゆる方法を準備していくことが重要といえるでしょう。

 たとえ衝突を免れないとしても、いつ・どこで・どれくらいの規模の衝突が起こるかを予測しやすい側面もあります。規模や頻度は違いますが台風やハリケーンと似ているとも言えるでしょう。例えば、先日日本の各地に大雨の被害をもたらした台風3号の予報は数日前から出されていました。そのおかげで、台風が直撃する日に自分がどういう行動を取るべきか対策を立てることができます。台風の進路の予測精度はせいぜい数日なのに対し、小惑星の場合は、それよりずっと先、すなわち数年、数十年後の軌道も予測できます。

 つまり、衝突日時・場所・被害の規模をあらかじめ想定できれば、地球環境を変えるような大きな衝突でない限り、安全に避難ができるということです。地域レベルでも、国レベルでも長期退避ができるように、地域、国、そして国際間で密なコミュニケーションが重要と言えます。

 以上のようなシミュレーションが、5月に開かれた国際会議で行われていました。具体的には、架空の小惑星が10年後、東京に衝突するという設定で、科学者だけではなく、政府や防災関係者など、さまざまな立場の人たちがどのように対応できるのかを検討していました。

小惑星衝突は、世界レベルの対策が必要な、非常にスケールの大きな問題です。その中で、私たち市民にできることはあるのでしょうか。地震や台風などに比べると、自分の避難行動だけで被害を免れることは難しいかもしれません。しかし、「適度な」危機意識をもち、万一衝突する事態になったときに落ち着いて行動できるよう、心の準備をしておくことは、大事なことの一つではないでしょうか。6月30日は小惑星衝突への危機意識を啓発する「国際アステロイドデー」でした。これを機会に、小惑星衝突の現実性と衝突回避についての国際的動向を頭の片隅にでも入れていただければ幸いです。

◎日本科学未来館 科学コミュニケーター 渡邉吉康(わたなべ・よしやす)
1986年、新潟県生まれ。幼少時に個性豊かな惑星の画像に魅せられことをきっかけに、惑星科学の道へ。大学院では生命の住める惑星の条件について研究。2016年4月より現職

《参考文献》
・日本スペースガード協会(2013)『大隕石衝突の現実 ―天体衝突からいかに地球をまもるか』ニュートンプレス.
・松井孝典(2014)『天体衝突 ―斉一説から激変説へ 地球、生命、文明史』ブルーバックス.
The NEOShield-2 Project Website
NASA Webpage

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