北朝鮮による大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射は周辺関係国の反発を招いています。ただ空母を派遣し、北朝鮮への圧力を強めてきた米トランプ政権は、現段階では実力行使に及んでいません。米国と北朝鮮の思惑を中心に、元外交官の美根慶樹氏に寄稿してもらいました。

【写真】緊迫する北朝鮮情勢(上)アメリカはどこまで「本気」なのか?

武力行使で北朝鮮の核排除は可能か

[写真]北朝鮮のICBM発表のニュースを報じるモニター。都内で撮影(ロイター/アフロ)

 北朝鮮は7月4日、ついにICBMの実験に踏み切りました。北朝鮮がICBMを保有するようになると米国は核攻撃の危険にさらされます。そのため、ICBMの実験は米国にとって「レッドライン」、つまり忍耐の範囲を超えると見られていました。

 しかし、米国は北朝鮮に対して当面は実力行使をしないと思います。米国が軍事行動に慎重になる理由として挙げられるのは、北朝鮮との戦争が起こると同盟国である韓国や日本が甚大な被害、壊滅的ともいえる被害を被る可能性があるということです。さらに、米軍自体の犠牲も非常に大きくなるという予測が20年前のシミュレーションで示されていました。今ならもっと大きな被害、これは推測に過ぎませんが、米軍兵士の犠牲は作戦開始から3か月で数万人に上るでしょう。

 このシミュレーションは、北朝鮮の非核化を目指して、核とミサイルだけを標的にして攻撃することはほぼ不可能だという前提に立っています。中東では限定的な範囲の作戦が可能かもしれませんが、北朝鮮の場合は、国土が消滅するくらいの攻撃でない限り、核とミサイルを完全に破壊することは不可能だと見られています。つまり、北朝鮮との間では限定戦争ではとどまらず、全面戦争になることは避けがたいのです。

 今回実験したミサイルは本当にICBMか、疑問なので米国は本気になっていないとする見方もあります。北朝鮮はICBMだと発表しました。米国は当初慎重でしたが後にICBMだと認めました。しかし、ロシアは「中距離弾道ミサイル」だと言っています。

 しかし、遺憾なことに、北朝鮮のミサイル性能は、米国本土への到達が可能なぐらいにいずれ向上するでしょう。そうなるとレッドラインはどこまでか、あらためて問題になりそうですが、レッドラインは事前に示しておくようなことではありません。米国としてはどう対応するか選択の余地を残しておくでしょう。これは米国だけのことでなく、国際間で対立状態にある場合の常識です。トランプ大統領自身、「レッドラインはひかない」と言っています。

この記事が気に入ったら「いいね!」をお願いします