武井咲(撮影:志和浩司)

 『黒革の手帖』の武井咲(えみ)がいい。第1回の放送前までは、どうせ米倉涼子と比べられるのは必至で、そうなると勝ち目がないような気もしてきて、原口元子役は演技力から仲里依紗のほうがいいんじゃないの、などと思っていたが、武井咲が想像以上に期待できるのだ。これまで数々ドラマ化されてきた同作、”武井版”はどんな位置づけになるのか。

繰り返しドラマ化される『黒革の手帖』はどんな女優が主役を演じてきたのか?

 『黒革の手帖』は、もともと松本清張の長編小説であり、巨額の横領事件を起こして銀座のママに転身した元銀行員の原口元子が、欲望渦巻く夜の世界を舞台に男たちを策略にはめながらのし上がっていく。1978年から80年にかけて『週刊新潮』に「禁忌の連歌」第4話として連載、単行本が刊行された。スリリングな展開がテレビに馴染むのだろうか、これまで何度もドラマ化されてきた名作だ。

 私事で恐縮だが、長年クラブ経営をしていた親がこの作品の熱心なファンだった。その道のプロが見ても夜の世界、人間模様の描写に一定のリアリティーがあった証だと思っている。

 単行本発売から2年後の1982年、テレビ朝日系「月曜劇場」枠で「松本清張の黒革の手帖」として初めてドラマ化が実現した。山本陽子が主演を務め、約1カ月に渡り全6回で放送。ほかのキャストも物語の鍵を握る相手役、安島富夫に田村正和、ライバルとなる山田波子役には萬田久子という強力な布陣だった。萬田演じる波子が元子(山本)のもとへ殴り込みをかける場面は、乗り込まれた側の山本の演技のうまさと相まって、本当にケンカしているのではないかといわれたほどの迫力だった。時代的にも、原作の陰鬱な雰囲気を色濃く反映している作品ではないだろうか。

 さらにその2年後、84年にはTBS系「花王 愛の劇場」枠で大谷直子を主演に迎え放送された。30分枠だったので、全37回と細かく分けられている。

 そこから12年の間を置いて、96年にテレビ朝日系「土曜ワイド劇場」で単発の2時間ドラマとして登場。主演は浅野ゆう子、波子を田中美奈子、安島を美木良介。

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