アメリカ自然史博物館で熱心に恐竜の展示に見入る少年。こうした光景は夏休み日本各地の博物館や恐竜展で見られるようだ。(写真:ロイター/アフロ)

 夏休み、各地の博物館は親子連れでにぎわっています。そこで催される特別展は、太古の地球からのメッセージを記憶した骨格標本や化石に直に触れる貴重な機会です。自由研究も兼ねて、いつもより科学者目線でこうした展示物を楽しんでみませんか。

 古生物学者の池尻武仁博士(米国アラバマ自然史博物館客員研究員・アラバマ大地質科学部講師)が、化石鑑賞のポイントについてまとめました。


本物の化石が持つ迫力・魅力

Image1:白亜紀後期の大型サメScapanorhynchusの歯をアラバマの化石現場で手にする筆者。(2017年7月22日撮影)

 この「生物40億年のメッセージ」の連載を通し、私は何とか化石の魅力や古生物研究の醍醐味、生物進化の奥深さなどを読者の方に伝えたいと奮闘してきた。しかし文章と写真や図といったイメージだけでは、どうしても限界があることをよく痛感させられる。どうしても届けられない種類のメッセージというものがある。

 それは化石の持つ「本物の迫力」「真の魅力」だ。

 こうして言葉に表してみると拙く響くかもしれない。しかし一化石研究者の私にとって、化石が内に秘める偉大なパワーは何よりも捨てがたい。この魅力をどうしたら伝えられるのだろうか?

 個人的なエピソードを一つ紹介してみたい。私は実物の化石に触れることを非常に好む。恐竜などの化石標本を調査する時、化石の表面に時々直接指をあててみる。野外調査を行っている時、見つけたばかりの化石を少しの間手の中に収めてみる。研究のためデータなど集めはじめる前に、しばらくの間じっと凝視してみる。時々、化石に少し私から語りかけることさえある(もちろん人目もあるので声には出さないが)。

 同業者や他の化石研究者・愛好家の方が、同じようなことをしているのかよく知らない(話題としてとりあげてみたことさえない)。「そんなことして何に役に立つ?」と聞かれると、私は答えに窮してしまう。ただ何かしら自然からのパワーを感じ取ろうとしているのだろうか。サイエンティストとして、細かな情報を逃したくないという心構えのつもりか。ただのげんかつぎなのか。その真意を特に確かめるつもりも、その予定もない。

 ただ私からこの記事を読んでくれている方に、一つだけフレンドリーな提案がある。もしどこかでチャンスがあるなら、実物の化石に触ってみてはいかがだろうか。化石を目の前に少しの時間でも、日常の雑事など忘れて見入ってみてはどうだろうか。骨や殻などの細胞によって形成された化石独特のざらざら感。それこそ何千万年、何億年という時を経て骨から岩石の成分へとって変わられた、化石のずしりとした重量感。繊細で一見壊れ易そうな化石骨の数々。どうして長大な時を経ても失われず我々の目の前にきれいに残っているのだろうか?

 こうした化石のもつ神秘性(とあえて呼ばせていただく)は、やはり実物を目の前にしてみないと感じ取れないものだろう。目の前の化石が太古の彼方、生命を宿していた当時の状況を想像してみるのも悪くない。

 こうした自然と直接交わる時間は、この喧騒につつまれた忙しい現代において、特に貴重なのではないだろうか。週末に山登りやフィッシングなどアウトドアを満喫したり、ペットや盆栽を手元に置いておくのも、根本的に似たような狙いがあるのかもしれない。月並みな言い方だが自然とのつながりを求めて。

この記事が気に入ったら「いいね!」をお願いします