蒼海のティーダ_主演は声優としても人気のある大島崚(撮影:志和浩司)

 コミックやアニメ、ゲームなど2次元で描かれた世界を舞台化した2.5次元作品が演劇界を席巻するようになって久しいが、近年、オリジナルのストーリーで2.5次元的な世界観をねらった作品も登場している。たとえば、東京・渋谷のCBGKシブゲキ!!で9日に初日を迎えた「蒼海のティーダ」は沖縄の人魚伝説を下敷きに、小さな島国の王子ティーダと人魚の恋、そして人魚をねらう兵士たちとの戦いを描くオリジナル作品だ。声優としても活躍する大島崚や本格的な殺陣で知られる鵜飼主水、人魚という難役を熱演する栗生みなをはじめ、オスカープロモーション所属でグラビアでも人気の船岡咲らが出演している。

アニメの舞台化、2.5次元舞台がオリジナルストーリーでも展開

蒼海のティーダ_人魚(栗生みな)とティーダ(大島崚)の恋も物語の軸の一つ(撮影:志和浩司)

 2.5次元作品のルーツは、70年代に空前のブームを巻き起こした宝塚歌劇団「ベルサイユのばら」に遡るといわれる。また、舞台ではないが、名作コミックのヒーローを現実のリングに登場させて80年代に圧倒的人気を博した新日本プロレスのタイガーマスクなども広義の意味で2.5次元コンテンツといえるだろうし、2000年代に入ってモーニング娘。と宝塚歌劇団がコラボした「リボンの騎士ザ・ミュージカル」は約1カ月に渡り新宿コマ劇場を満員にし、女性アイドルを2.5次元舞台に融合させた。

 日本のコミックやアニメといった文化は、フランスなど海外でも熱心なファンを持つが、日本人に馴染む表現なのだろうか。2003年に登場したミュージカル「テニスの王子様」などは、代表的な2.5次元作品。それまで演劇に興味のなかった人々が劇場につめかけ、斎藤工はじめ同作をステップに羽ばたいた俳優も数多い。

蒼海のティーダの一場面(撮影:志和浩司)

 「蒼海のティーダ」の場合、全体的に2.5次元的世界観で演出されているものの、コミックなどの原作はなく、舞台自体がオリジナルというのが特徴だ。脚本と演出を手掛けた松多壱岱氏(オッドエンタテインメント)は、これからの2.5次元舞台について「より一層、イベント性、エンターテイメント性の高いものが求められて行くと思います」と予想する。

 松多氏はこれまでにもアニメ原作の「実は私は」「レーカン」、ゲーム原作の「鬼斬」「のぶニャがの野望」など2.5次元舞台を手がけ、プロジェクションマッピング導入など、映像的な表現手法を舞台に取り入れてきた。演出舞台の年間動員数は2万人を超える。

 「プロレスがすべての格闘技を内包すると言われるように、演劇の懐も深く、さまざまなコンテンツを飲み込めるもの。新たな表現がどんどん生まれていくと思います。かつてあった演劇のムーブメントのように、数年後には2.5次元演劇もムーブメントの一つとして語られることになる気がするんですよ」(松多氏)

蒼海のティーダ_本格的な殺陣が連続する(撮影:志和浩司)

 ライブエンターテインメント市場は近年、急成長。実際にその場に足を運び、そこにいなければ感じ取ることのできないものを体感することが、エンターテインメントの主役になってきた。演者と観客が同じ空間で、生の体験を共有するのが醍醐味だ。

蒼海のティーダ_船岡咲は不老不死の体を持つ女の子役を好演(撮影:志和浩司)

 「そういった流れの中で、僕は物語性、テーマ、俳優の肉体を使った表現、熱量に拘っていきたく思っています」と熱く語る松多氏。2.5次元エンターテインメントは、今後もますます盛り上がりそうだ。

(取材・文・撮影:志和浩司)

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