金太朗倶楽部オーナー、佐藤はま代さん(撮影:志和浩司)

 武井咲(えみ)主演で13年ぶりに連ドラ化された『黒革の手帖』。元銀行員の原口元子が横領した金を元手に銀座のクラブのママとなり、その後も金持ちの客をあの手この手で攻略してのしあがっていく松本清張原作の名作サスペンスだ。実際の夜の銀座はどうなのか? 

 「物語に近いことは、現実にもありますね」―と語るのは、40年近く銀座で生き抜いてきた金太朗倶楽部オーナー、佐藤はま代さん。同ドラマのファンでもあるというベテランママの手帖の中身は? 第1話は、佐藤さんが夜の銀座に身を投じ、自分の店を持つに至った背景。

【連載】銀座『黒革の手帖』のリアル

「こんなに長く銀座にいるとは思わなかった」

 魑魅魍魎が跋扈(ばっこ)するといわれる銀座の夜の世界を生き抜いてきた佐藤さんは、物腰が柔らく、優しげな微笑みをたたえた和服が似合う淑女。今年、七夕の日に大きな手術をした。9月がくると70歳になる。

 「こんなに長く銀座にいるとは思わなかった」と話す。ドラマ『黒革の手帖』は、幼いころ、父親の借金を背負った母親に女手ひとつで育てられた武井演じる原口元子が、「お金に勝ちたい。お金を支配したい」と、お金に復讐するかのごとく男たちを次々とワナにはめていく。元子は、ホステスとしてあまり経験豊富とはいえない状態で自分の店『カルネ』を持ち、銀座のママとして君臨する。

 「私が銀座に入ってわかったのは、この街でお店を開いているママは、元子のような黒い手段は使わないですけど、『私は銀座でママをやりたい』って、そこは元子と同じくものすごく強い志を持った人が多いこと。元子も最初は『燭台』という店で派遣ホステスをしていましたが、あのように最初はどこかにお勤めして、雇われママになって、少し力をつけて、自分のお店を持つパターンが多いですね」

 佐藤さんの場合は、夫を亡くしたことが夜の銀座に身を投じるきっかけとなった。時はまだ、バブル前のお話だ。

 「結婚する前は、順天堂大学病院に勤めていたの。芸能人、力士、ドクター、インターン、看護師さん……など、一般とは違う特殊関係者という外来の事務でね。結婚して、3人子どもをもうけて、30代になってからは帝国ホテルの中にあるお寿司屋さんに社員として勤めていたんです。幸せでしたね。でもそんなとき、主人をがんで亡くしてしまったんです」

 佐藤さんの両親もすでに他界、姉は高知に嫁いでおり、頼れる身内が一人もいない状況だった。

 「名門ホテルのテナントですので仕事面は割と厳しくしつけられたのですが、どうあがいても、子どもたちを高校、大学に進学させるほどには稼げない。子どもたちを大きくするには、何かお商売をやるしかないなって漠然と思ってはいたんです。でも、まさか銀座でお店をやるなんて想像もしていませんでしたよ」

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