V13に失敗した山中(右)はネリの左のフックを何発も浴びた(写真・山口裕朗)

ボクシングのWBC世界バンタム級王者の山中慎介(34、帝拳)が15日、京都の島津アリーナ京都で同級1位のルイス・ネリ(22、メキシコ)との13度目の防衛戦に臨んだが、4ラウンド2分29秒にTKOで敗れ、元WBA世界ライトフライ級王者、具志堅用高氏が持つ13度の連続日本記録に37年ぶりに並ぶことができなかった。

 ネリが入念に練った作戦の罠に嵌っての敗北だったが、4ラウンドのTKOは、山中陣営のセコンドが暴走してタオルを投入したことが発端となっていた。帝拳の本田明彦会長は「最悪のストップ。ビックリした。山中も納得していないだろう」と無断でタオルを投げたトレーナーに激怒。山中も「効いたパンチもなかった。期待してくれたファンに申し訳ない」と悔しさを隠さず号泣した。セコンドの暴走がなければ逆転勝利があったのか。それとも……まさかの不完全燃焼で、6年間積み上げてきた記録が止まった34歳の神の左と呼ばれたボクサーは、今後の進退についての明言を避けた。

セコンドの暴走がなければ勝てていたのか。山中は号泣した(写真・山口裕朗)

 超満員の島津アリーナ京都が悲鳴で染まる。

 4ラウンド。山中は、挑戦者の乱暴なフックにバランスを崩してロープを背にした。雨嵐のパンチを浴び続けながらもセカンドロープに腰を落として懸命に耐える。反撃の手も止まった。それでも、まだダウンはしていない。決定的なダメージブローも打たれていなかった。しかし、レフェリーの視界にコーナーを駆け上がってきた山中陣営の大和トレーナーの姿と投げ入れられたオレンジ色のタオルが入った。レフェリーは、山中陣営が棄権の意思表示を見せたと考え、2人の間に体をこじいれてTKOを宣言した。2分29秒だった。
 
 リング上で山中は「え?」というような顔をしていた。

 そして、次の瞬間、鳴り止まない慎介コールに感極まったのだろう。号泣した。控え室に帰って、しばらく、ドアが閉ざされていたが、そこでも山中と大和トレーナーの涙は止まらなかったという。

「負けてこんなこと言うのは何だが、向かい合った瞬間、たいしたことがないと思った。4回は、まだ大丈夫だったが、(手が)止まってしまったのでセコンドに心配をさせてもしまった。効いたパンチはなかった。見た目はどうかわからないが、一発のパンチ力も感じなかったし、戦いやすかった」

 山中のコメントも敗者のそれではなかった。

 会見の最中に、廊下に出た本田会長は早すぎるタオル投入をしたセコンドの暴走に怒りを爆発させた。

「ダウンもしておらずタオルを投げるタイミングじゃない。ビックリした。個人の感情が入った最悪のストップ。魔がさして頭が真っ白になったんだろうけど、こういうこと(冷静に判断できないこと)が起きるから私は、親子にセコンドをやらせるようなこともしないんだ。山中は相手のフックを流していた。それを(セコンドが)わかっていない。
 一回我慢してから巻き返し倒して勝つのが山中のボクシング。展開は予想通り。7回や8回で、あの展開ならまだわかるが、今回、山中は練習の段階から肉体が丈夫で強くなっていたんだ。チケットが手に入らないほどの記録のかかった大きな興行。お客さんやファンに申し訳ないし、これからという展開で、ああいうことが起きて、もし私がファンならカネ返せの世界ですよ。タオルはもとより(セコンドが)リングの中に入っちゃっているんだから、取り返しがつかない。山中も納得いかないだろう」

 帝拳ではタオル投入や重要な試合中の作戦指示は、本田会長が出すが、今回は会長の判断を仰ぐことなく、山中と長年タッグを組んでいた大和トレーナーが独断でタオルを投げたという。

 WBCのルールではタオル投入による棄権は認められていない。セコンドがリング内に足を踏み入れた時点で失格負けになる。今回は、棄権の意志表示を認めたレフェリーがTKOを宣言した形で、タオル投入で負けが決まったわけではないが、一度もダウンがない時点での早すぎる決断と、リングに突入してしまった行為に対して「もしタオル投入とセコンドのリングに入る行為がなければレフェリーは試合を続行していただろう」という関係者の見方もある。
 
 だが、もしセコンドの暴走がなければ逆転KO勝利できていたのか?
   

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