財務省は8日、2017年上半期における日本の経常収支が10兆5101億円の黒字になったと発表しました。黒字幅はリーマンショック以降では最大でしたが、これは何を意味しているのでしょうか。

経常収支ってどういうもの?

[イメージ写真]日本の経常黒字10兆円超でリーマンショック後最大(アフロ)

 経常収支は日本と海外との間での最終的な収支を示したもので、日本に入ってくるお金が多ければ黒字、出て行くお金が多ければ赤字となります。具体的には貿易収支に海外への投資から得られる収益(所得収支)を加えて算出します。

 経済成長と経常収支は直接関係するものではなく、必ずしも黒字だからよい、赤字だからダメということはありませんが、経常収支のあり方はその国の経済の構造をよく表わしているので、専門家の多くが注目しています。

 日本は昭和の時代までは輸出大国でしたから、長期にわたって貿易収支の黒字が続いてきました。しかし、徐々に貿易黒字の割合は低下し、2005年には貿易収支と投資から得られる収益が逆転。現在もその状況が続いています。黒字幅が最大となったのは、海外投資から得られる収益である所得収支が順調に増加しているからです。

日本が貿易立国から投資立国に

 これは何を意味しているのかというと、日本が貿易立国から投資立国に変わったということです。製造業はどんなに優れた技術を持っていても、いずれ技術は陳腐化し、後発の新興国にキャッチアップされます。このことは、米国や英国など先進工業国を懸命に追いかけ、そして、追い越してきた日本企業の歴史を見れば明らかです。

 コモディティ化した技術をいつまでも国内に維持しておくと、新興国との価格競争で負けてしまいます。こうした技術は積極的に現地生産に切り替え、価格競争力を維持した方が得策です。国際収支の上では、貿易黒字が減少する代わりに、投資した現地法人からの配当といった名目になりますから、投資収入(所得収支)が増える結果となるのです。

しかし、グローバル金融ビジネスは不得意

 先ほど、経常収支が赤字なのか黒字なのかは経済成長とは直接関係しないと書きましたが、まったく無関係というわけではありません。経常黒字国だった国が急に赤字国になるとお金の調達方法が変わってしまい、経済が混乱するからです。

 日本は米国のようなグローバル金融ビジネスを得意としていませんから、やはり外貨は製造業の海外進出によって稼ぎ出した方が、無理がないでしょう。その点から考えると、貿易収支から所得収支へと名目は変わっても、従来と同じように外貨を獲得できているというのはプラスに評価してよいことです。

 一時期、生産設備の海外移転に対しては産業の空洞化を招くと一部から激しい批判が寄せられました。しかしながら、日本企業が海外移転を決断していなければ、現在の経常収支は維持できなかった可能性が高いでしょう。

(The Capital Tribune Japan)

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