(撮影:志和浩司)

 夫に先立たれ、女手ひとつで子どもを育てていかなければならなくなった、佐藤はま代さんは、知人との偶然の再会をきっかけに銀座の夜に身を投じるようになった。持ち前の明るい性格が不思議と銀座の水によく馴染み、やがて自分の店を持ち、銀座のママとなる。

 しかし、夜の銀座のただならぬ雰囲気は次第に肌で感じることになる。欲望と嫉妬と怨念が渦巻く夜の銀座世界。次々と火の粉のように降りかかる試練の数々に佐藤さんはどう立ち向かってきたのか? ほとんど素人同然として飛び込んだ当初から現在まで、佐藤さんをささえてきた信念とは?


  店は順調、オープン当初から黒字に 「素人っぽさがよかったのかも」

 店は順調、オープン当初から黒字が続いた。返済も大きかったが、それ以上に客が入ったのだ。大手企業の社長も常連客になってくれ、毎日のように部下を連れてきたという。

 「返済金が毎月150万、家賃が65万、それに光熱費。広いクラブでしたから、女の子も毎日人数を揃えていないと追いつかない。個人差はありますけど平均にならして1人40万円以上は出してましたからね。それから、仕入れ。結構かかりました。結局、月に最低でも600万は必要だったんですけど、それがなんとなくできたんですね」

 前オーナーのときからの客もいたが、ほとんどは新しく佐藤さんが連れてきた客だった。

 「お客さまが言うには、私がベテランの銀座のママじゃなくて、素人が始めたみたいなものでしたから、その素人っぽさがよかったのかもしれないと。でも『黒革の手帖』とは違って悪さなんか一切しないですよ、お客さんに感謝申し上げるほうだから(笑)」

 悪さはしなかったが、されたことなら幾度もあるという。   

【連載】銀座『黒革の手帖』のリアル