江崎鉄磨沖縄北方担当相が見直しに言及する発言をしたことで注目を集めた「日米地位協定」ですが、多くの米軍基地を抱える沖縄県が抜本的な改定を長く求めている問題でもあります。しばしば不平等な側面が指摘される地位協定は、日本の場合はまだ一度も改定されていないことも言われます。あらためて、地位協定とはどんなもので、どんな課題があるのかについて、元外交官の美根慶樹氏の解説です。

【写真】沖縄「本土復帰45年」戦後の歴史を振り返る

「日米安保」に合わせ締結

 日米地位協定とは、日米安全保障条約に基づき日本に駐留する米軍が使用する施設・区域、すなわち基地と、米軍の我が国における地位に関する日米両国の合意です。これがないと米軍は日本で行動することが実際上、困難になります。例えば、基地をどこに置くか決まっていなければ米軍の居場所はありません。宿舎についても決めなければ米軍人とその家族が住む所がありません。米軍が人を雇うにも、米軍人ではないので日本側との合意が必要になります。基地で使用する電気、水などをどちらが負担するのかも決めなければなりません。地位協定は日米安保条約を機能させるのに必要な取り決めです。

 現在の日米地位協定は、1960(昭和35)年に現在の日米安全保障条約が締結された際結ばれました。それ以前には、旧日米安全保障条約に基づく行政協定がありました。行政協定が結ばれた1952(昭和27)年は日本が独立を回復した年であり、日本政府の発言力は限られており、行政協定は不平等性が強かったと見られていました。

 地位協定は行政協定の内容をほぼそのまま承継したので問題があり、改正が必要だという意見がありますが、歴史的経緯には留意すべきでしょう。

[写真]2016年、米兵による女性暴行事件を受け沖縄で大規模な抗議集会が開かれた(ロイター/アフロ)

 米軍基地の運営や米軍人の行動についてはさまざまな問題が発生しています。いわゆる「基地問題」であり、全国の米軍専用施設面積の約75%にのぼる米軍基地が集中している沖縄はとくに大きな苦痛を強いられています。沖縄県は、米軍基地の沖縄への集中の是正、住民の安全確保などのため地位協定の見直しを求め、また、日本各地と連携して基地問題を解決するため「全国行動プラン」を実施し、全国知事会で協力を呼びかけています。

 現実には、しかし、日米地位協定の改定は1回も実現していません。最近環境保護と米軍の「軍属(米軍に勤務する米国籍民間人など)」の範囲の縮小に関して追加の協定が結ばれましたが、いずれも「地位協定の補足協定」と位置付けられています。これらは実質的には協定の改定と言えるので、地位協定の改定が行われたことがないことにあまり大きな意味を持たせるのは適当でないでしょうが、地位協定の改定をしないことには歴代日本政府の弱い姿勢が象徴的に表れているという見方もあります。

この記事が気に入ったら「いいね!」をお願いします