手首のケガで今季絶望となった錦織圭だが、その復活の道は険しいのか?(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

得意な北米ハードコートを皮切りに巻き返しを期した錦織圭の今シーズンは、思わぬ形で突然の終焉を迎えることとなった。全米オープン開幕を2週間後に控え、最終調整も兼ねて挑むシンシナティ・マスターズでの練習中のこと。サーブを打った際に錦織は、右手首に“ポン”という軽い破裂音を聞いたという。その後にMRI撮影を行い、写真を複数の専門医に見せて診断を仰いだところ、右手首の尺側手根伸筋腱の損傷が確実視された。現時点では手術は受けない予定だが、年内の復帰は断念。当面はギプスでの患部固定が必須であり、最終的な判断は再検査後に下すことになる。

 手首の負傷はテニス選手間では珍しくなく、特に近年、増加の傾向にあると言われている。また2000年台に行われた調査によると、尺骨側(小指側)を痛める選手の多くは、ウエスタングリップでトップピンを多用するプレースタイルだった。錦織のケガはその意味では、典型的な症例と言えるかもしれない。

 近年、右手尺側手根伸筋腱を痛めたトッププレーヤーとして真っ先に名があがるのが、ホアン・マルティン・デルポトロだ。2009年全米オープンを20歳にして制した“次代の王者最右翼”は、翌年は初頭から手首の痛みに悩まされ、最終的には5月上旬に手術を受ける。練習開始はその約3ヶ月後で、公式戦への復帰は9月下旬だった。なおデルポトロの症状は“尺側手根伸筋腱裂傷”で、原因は、手首に負荷をかけ続けたことによる故障だったようである。

 対して錦織の場合は、サーブを打った際に「音を聞いた」というのだから、一つの動作を起点として負ったケガなのは明らかだ。ただ専門家によれば、音が断裂によるものだとすれば、手術をしない判断を早々に下すのは不自然だという。

 日本テニス協会医事委員でもある同志社大学・スポーツ健康科学部の北條達也教授は、錦織が自身の公式アプリで公開した動画を見た際に、右手に施したギプスが手首のみならず、肘関節まで固定している点に注目した。

 腱断裂なら、通常は固定するのは手首のみ。肘を含め固定するのは、前腕の回内外を止めたいという意図が考えられる。そのようなギプスの形状、そして「音が聞こえた」という状況等を勘案すると、腱の損傷とは脱臼の可能性もありそうだ。

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