観光庁が訪日観光客を増やすため、旅館業界に対して食事料金と部屋料金を別立てにする、いわゆる「泊食分離」を促していくそうです。旅館は食事と宿泊がセットであることが多いのですが、これをあらためることで宿泊者を増やすことはできるのでしょうか。

写真:アフロ

 日本政府観光局によると、今年7月の訪日外国人客数は268万2000人と過去最高を記録しました。これまで単月としては過去最高だった2016年7月の229万6000人を38万人以上も上回っています。訪日客の増加で宿泊施設はどこも満員かというと必ずしもそうではないようです。

 観光庁がまとめた宿泊旅行統計調査によると、2016年におけるシティホテルやビジネスホテルの稼働率が70%台後半だったのに対して、旅館は37.1%とかなり低迷しています。温泉旅館の中には、あえて不便なところに立地しているところや、地方には零細旅館も多いことから、一概に比較はできませんが、リゾートホテルでも6割近い稼働率があることを考えると、やはり旅館の稼働率は低いといってよいでしょう。

 観光庁ではこうした低稼働率の原因のひとつとして、食事の提供形態があると考えています。日本の旅館は「1泊2食付き」が基準となっていることが多く、食事と宿泊が分離されていません。これは短期の宿泊が中心となっている日本人旅行者を想定したパッケージです。しかし訪日外国人の中には長期滞在をする人も多く、同じような食事が続く日本の旅館は敬遠されがちといわれます。

 食事の時間について指摘する声もあります。日本の旅館は、食事の時間が決まっており、それ以外の時間には対応しないというところも少なくありません。外国人観光客は、時差がある状態で深夜や早朝に到着するケースも多く、初日はちょっとだけ軽食を食べたいといったニーズが存在しますが、こうした部分で旅館が避けられている可能性は否定できません。

 この話はわたしたちが外国に旅行した時のことを考えれば分かりやすいでしょう。確かに現地のスタイルで現地の料理を食べることはよい体験ではありますが、あまり慣れていない食事を何日も提供されてしまうと、さすがに少々飽きてしまうというのが現実でしょう。ご飯や蕎麦、ラーメンなどが食べたくなるはずですが、これは外国人にとっても同じことです。

 古い寺社の修復などを手がける企業を経営し、観光立国に関する書籍も執筆しているデービッド・アトキンソン氏は、多くの人が伝統的な日本文化だと信じている「旅館」のスタイルについて、「戦後、国内で増加した『団体旅行』をさばくために発展したものにすぎない」と鋭い指摘をしています。

 伝統文化は変化に対応してこそ長く生き残ることができます。日本旅館のあり方についても、もっと柔軟になった方がよいでしょう。

(The Capital Tribune Japan)

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