哺乳類はいつ頃、飛行をはじめたのだろうか?その進化プロセスとはどのようなものだったのだろうか?写真の種はジュラ紀後期のマイオパタジウム。(写真提供:Dr. Zhe-Xi Luo/University of Chicago)

 今から約2億年前から1億5千年前まで続いたジュラ紀は、恐竜の時代として知られています。しかし最新の学術雑誌Natureで、中国遼寧省のジュラ紀後期の地層から発見された化石が、モモンガのように滑空する最古で新属新種の哺乳類だった、と紹介されました。

 古生物学者の池尻武仁博士(米国アラバマ自然史博物館客員研究員・アラバマ大地質科学部講師)が研究者から提供を受けた化石の写真をもとに、飛行性を持った哺乳類の進化の謎について報告します。


【連載】北米アラバマより“生物40億年のメッセージ”

空間を支配する哺乳類

Image 1:飛行性を備えた現生の哺乳類はいくつか知られている。こうもり(左)とモモンガ(右)は、その体つきや飛行の方法も大きく異なる。(アフロの写真をもとに作成)

 お盆明けにクイズを一つ。「空を飛ぶことのできる哺乳類はいくつ(のグループが)いるだろうか?」 大空を鳥や蝶のようにはばたくだけでなく、凧のように空中に一定の時間でも、とどまり、方向やスピードを起用に変える能力をもつものも含む。

 正解は、現生のものに限れば大まかに5つのグループだ。こうもり類、リス科(ムササビやモモンガ)、同じくげっ歯類のウオコオリス科(Anomaluridae)、サル類(ヒヨケザルDermopteraとキツネザル目のシファカ属Sifaka)、そしてオーストラリア大陸一帯に生息する有袋類の仲間(フクロモモンガ属Petaurusとグレート・グライダーの仲間、そしてフェザー・テイル・オポッサムAcrobatidae)が知られている。

 閑話休題。こうした知識はあえて知っていなくても、特に世界平和に影響を与えることはないだろう(ないはずだ)。しかしカレーライスに添えられる福神漬けの如し。無いと何だか無性にわびしく物足りない気分にさせられる(私だけだろうか?)。あれば一時でもハッピーにさせてくれる、清涼剤のようなものだろうか。こうした点において、生物の多様性や進化における知識を、日ごろから少しずつでも蓄え、吸収し続けているのも悪くはないはずだ。(私のこの連載が、ささやかながら役に立ってくれれば幸いだ。)

 さて約1000種近く知られている「こうもり目(Chiroptera)」は、現在、げっ歯類に次いでもっとも繁栄している哺乳類だ。ご存知のように、体の大部分が羽にあたり、高速で時にアクロバテックに優れた飛行性を進化上、手に入れてきた。いわゆる「パワー飛行」というもので、自分から(筋肉によって)動力を出すことができる。多くの鳥や昆虫も基本的に同じように羽を直接動かすことによって、このはばたき飛行を可能にする。

 一方、他の飛行型哺乳類は、基本的に羽ばたくことはほとんどできない。高所から飛び降りるパラシュート原理を応用する(滑空と呼ばれる)。風呂敷及びマント状のものを利用して、高い木の枝から枝へと飛び移る。基本的には落下傘型タイプの飛行だ。かなり器用に方向やスピードをコントロールできるものもいる。自分から上昇することはできない。(ちなみに同じような原理を利用して、ヘビやカエルの種も幾つか、飛行をすることが知られている。一部のヒトも似たような行動を時々行うようだ。)

 この落下型タイプの飛行(滑空)を行う哺乳類として、ムササビとモモンガが真っ先に思い浮かぶだろう。両者はリスの仲間だ(5亜科58属285種を含む一大哺乳類グループだ)が、両者ともやや大型のモモンガ属(Pteromyini)と比較的小型のムササビ属Petaurustaに分類されているようだ。(注:この分類学と近縁関係は、まだ意見が少し分かれているようだ。)

 サルの一部や有袋類なども、腕から脇腹にかけて発達した皮膚の膜―いわゆる「飛膜」―をもち、程度の差こそあれ、頻繁に滑空することが確認されている。さまざまな哺乳類グループにおいて、飛行や滑空を行うことが分かっていただけただろうか? この事実は、飛行性を行うだけでは、進化上の近縁関係、及び一大グループに分類されることができない。例えば映画「バットマン」の主人公が、いくら容姿を似せていても、コウモリの種ではないように。(何千万年という進化の歴史は、それなりに濃厚で重い。)

 さてこうした落下型タイプの飛行形式は、哺乳類の進化上、何時、どのようにして起こったのだろうか?今回の本題だ。