高齢者のがん治療のあり方が大きく変わりつつあります。75歳以上の高齢者では、体への負担が大きい手術や抗がん剤といった積極的な治療を控える傾向が高いことが分かりました。これまでがんの治療は標準治療が一律に行われるケースが多かったと言われていますが、今後は患者の希望によって治療のあり方も変わってくることになりそうです。

イメージ写真:アフロ

 国立がん研究センターが公表した2015年のがん診療に関する全国集計によると、複数の部位において、がんが転移するなど病状が進行した高齢者の場合、積極的な治療を受けないケースが年々増加しています。たとえば大腸がん(85歳以上、ステージ4)では、治療なしという患者の割合は2012年には30.5%でしたが、2015年には36.1%に増加しています。胃がん(85歳以上、ステージ4)では治療なしの割合は2012年には50.3%でしたが、2015年には56%に拡大しました。

 がんの治療は手術と抗がん剤の組み合わせが標準的ですが、どちらも体への負担が大きいという特徴があります。手術は全身状態がよくないと実施できませんし、抗がん剤は、吐き気や貧血など多くの副作用があり、重篤化した場合、患者はかなり苦しむことになります。高齢者の場合には全身状態を考慮した上での個別対応が必要となるわけです。

 また一部の部位については、高齢者の場合、抗がん剤治療を行っても延命効果がはっきりしないケースがあることも分かってきました。

 苦しい治療に耐えても延命効果が明確でないということであれば、無理な治療は行わず、生存期間中における生活の質を重視する方がよいという考え方も出てくることになります。医療の世界ではQOL(クオリティ・オブ・ライフ)と呼ばれていますが、高齢者のがん治療は、QOLを重視する方向に変わっていく可能性が高いでしょう。

 現在、高齢者のがん治療については明確な基準がなく、主治医の裁量に任されている状態ですが、75歳以上の患者の割合は高齢化に伴って年々上昇しています。高齢化に合わせて治療に対する基準も変化していくことになりそうです。

 もっとも、どのような治療を選択するのかは最終的に患者が判断すべきことです。積極的な治療を望むのか、QOLを重視するのか、選択肢が増えていることは、患者にとって喜ばしいことといってよいでしょう。

(The Capital Tribune Japan)

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