写真:ロイター/アフロ

 1980年代後半から90年代前半までの資産(株式・不動産)バブル発生とその崩壊後の不況について、日銀の金融政策に原因を求めることが少なくありません。バブル発生は1980年代後半の行き過ぎた金融緩和が、バブル崩壊後の深刻な景気低迷は行き過ぎた金融引き締めが原因だったという指摘です。

 本来、日本銀行(その他多くの中央銀行)の政策目標は「物価安定」であり、資産バブルの防止およびその崩壊後の対処は直接的な責務ではないのですが、金融政策が資産価格に影響を与える以上、日銀にとっては避けて通れない問題です。

【連載】マーケットの動きがわかる 経済指標深読み

米国株 シラーPERの推移

 幸か不幸か、今の日本経済は株価・不動産が著しく上昇しているわけではありませんから、こうした資産バブルについての議論は過熱していません。しかしながら、最近の米国では株価や不動産価格の割高感を指摘する声が増えており、金融政策を巡る議論が盛り上がっています。バブルの研究等でノーベル経済学賞を受賞しているロバート・シラー教授が開発したシラーPERという指標で米国株を評価すると“軽度のバブル”と診断されても違和感のない水準にあります。

資産価格の変動に対する中央銀行の政策スタンス「FEDビュー」と「BISビュー」

 そこで本稿では、中央銀行の金融政策と資産価格について考えてみたいと思います。

 資産価格の変動に対する中央銀行の政策スタンスについては、大きく分けて2つの考え方があります。一つはFEDビュー、もう一つはBISビューと呼ばれるものです。FEDは米国の中央銀行、BISは国際決済銀行という金融面で国際調整を担うための機関の名称です。

 まずFEDビューは、大まかにいえば、「物価安定」の達成を目的とする金融政策の結果、資産価格が大幅な上昇を示したとしても、それを金融引き締めによって阻止する必要はない、との考え方です。というのも資産バブルは、(1)それが発生しているときに客観的な判定ができない、また(2)バブル退治のために金融引き締めを実施したとしてもそれによって資産価格の急騰が収まるかわからない、(3)引き締めの結果として生じる実体経済への悪影響が無視できない、という問題があるからです。またバブルを未然に防ぐことを重視する結果として、失業が発生するくらいならば、(4)バブルが崩壊してからその時々の状況にあった対策を講じた方が全体として望ましい政策運営ができる、というものです。

 これに対してBISビューというのは、資産バブルを未然に防止することを重視する立場をとり、バブルの兆候がみられた場合、速やかに予防的な金融引き締めを実施すべきとの考え方です。これは日本のバブル崩壊に影響を受けている側面があり、バブル発生中に観察される過剰投資がその後の深刻かつ長期の不況を招くため、そうした代償を払うくらいならば、 “不人気政策”である金融引き締めを早期に講じるべき、というわけです。ちなみに、こうした資産価格の過熱などは「金融不均衡」と表現されることが多いです。