まるでプロレスの反則技の被害にあった高谷の左目は頭突きを受けて腫れていた

レスリングの世界選手権の最終日に男子フリースタイル4階級が当地のパリで行われ、リオ五輪代表で74キロ級に出場した高谷惣亮(28、ALSOK)が、1回戦、噛み付き、頭突きのまるでプロレス技の反則暴挙の被害に合う事件があった。その試合は、当然、高谷の反則勝ちとなったが、頭突きによる脳震盪などの後遺症に苦しみ、2回戦でロンドン五輪の金メダリスト、ジョーダンアーネスト・バローズ(米国)に敗れ、敗者復活戦でも、勝ちあがることができずにメダルを逃した。

 事件が起きたのは1回戦のグレゴリヤン(27、アルメニア)戦。五輪出場も、世界選手権で表彰台に上がった経験もなく、欧州選手権で3位に入っているレスラーだ。
 高谷は、得意のタックルから順調に得点を重ね、3分の前半を6-0とリードしていた。30秒のインターバル後、グレゴリヤンは大きなポイント差に焦ったのか、乱暴な攻撃を始めた。
 3分30秒頃、激しい頭突きをしながらタックル。場外へ押し出しつつ高谷の後ろのポジションをとり得点に結びつけた。直後、高谷は、左手で左目を覆い、うずくまっていた。マット中央に戻りなさいというレフェリーの促しがあるが、すぐには立てないほどだ。もう一度、促されて立ち上がりながらレフェリーに「頭突きがあった」と訴えてマット中央に戻った。

 レスリング競技において、偶然に頭と頭がぶつかることはある。そのため、よっぽど露骨に故意だとわかるとき以外は、レフェリーから即、反則であると告げられることはほとんどない。このとき、高谷が被った頭突きについても、口頭注意はあったものの反則にはならなかった。

 その後、「ふらふらになった」と、バランス感覚を失った高谷のタックルの精度が落ちたため、返し技などで得点を奪い合う大味な展開になった。途中、グレゴリヤンが、僅差でリードした場面もあったが、4分30秒ごろ、高谷が相手の頭と足を同時に抱え込んで、体ごと押さえ込める体勢に持ち込んだ。そのままフォールになるかと思われた。だが、高谷の腹が顔の前に来たそのとき、グレゴリヤンがなんと噛みついてきた。

 異常に気づいたレフェリーが試合を止め、両者を離し、高谷のシングレット(試合着)の下に残る噛み跡を確認すると、グレゴリヤンの反則負けを宣告した。

「もう、痛いなんてもんじゃないですよ。絶叫ものです。ラフプレーはよくされてきましたが、噛みつかれたのは初めてです」

 試合を終えた高谷は、頭突きで左目の上を大きく腫らしたまま、噛みつき被害のことを振り返った。そして、消毒してガーゼを当てた下の、くっきり歯形が残る脇腹を見せてくれた。

「こんなにひどい頭突きも初めてで。今もちょっとクラクラします。頭痛と吐き気みたいなのが、今もあります。今日は全部で3試合ありましたが、2試合目以降はちょっと気持ちが悪いなかで試合をしていました。タックルもうまく入れなくなったし。これまでもいろいろな目に遭ったけれど、最大級のダメージですね」

 結局、高谷はこの試合のダメージが次の試合に影響して2回戦で敗れ、敗者復活戦も1試合目でベラルーシに敗れてメダルに手が届かなかった。

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