人手不足から、パートタイム労働者の時給が上昇しています。賃金全体を見るとまだまだ伸び悩んでいる状況ですが、パートタイム労働者の賃金が物価上昇の引き金になるかもしれません。

パート労働者の賃金上昇が顕著に

イメージ写真(ペイレスイメージズ/アフロ)

 厚生労働省の毎月勤労統計によると、6月におけるパートタイム労働者の時間あたりの給与は前年同月比でプラス3.0%と大幅な伸びを記録しました。一般労働者(給与総額)は前年同月比でプラス0.4%ですからかなりの開きがあります。

 パート労働者の時給は今年に入って著しい伸びを示しており、毎月、前年同月比で2%を超える上昇が続いています。日本は最低賃金が先進諸国の中では突出して低いなど、非正規社員の待遇が悪すぎたという現実がありますから、これが調整されているだけに過ぎないとの見方もできますが、パート労働者の賃金上昇が顕著なのは事実です。

デフレ脱却は実現できるのか

 アベノミクスのスタート以後、日銀は積極的な緩和政策を続けてきましたが、日本の物価はほとんど上昇していません。今年に入ってからは、むしろデフレ懸念が台頭しているくらいですから、インフレという言葉はどこか遠い世界のような印象です。

 しかし、足元では人手不足が深刻になっており、その状況は着実にパート労働者の時給などに表れています。リクルートジョブズがまとめた三大都市圏のアルバイト・パートの募集時平均時給は6月時点で1012円でした。この金額は毎月着実に上昇しており、この傾向は今後も続くと考えられます。これはあくまで平均値であり、現実には1000円を提示しても人が集まらないというケースは続出しています。

 多くの企業において、アルバイトやパートは現場の戦力となっていますから、どうしても必要な人数を確保しなければなりません。このまま時給の上昇が続いた場合、企業の利益は確実に減りますから、企業は製品やサービスの販売価格にこれを転嫁することになります。このサイクルがうまく回れば、めでたくデフレ脱却ということになりますが、必ずしもそうなるとは限りません。

イオンは再度の値下げを実施

 商品価格が上昇すると、消費者が購買を控え、販売数量が減少する可能性があります。大手スーパーのイオンは、消費者の購買意欲は低いとして、再度の値下げに踏み切っているくらいです。購買力が伴わない状態で値上げだけが進んでしまうと、景気が低迷したまま、物価だけが上昇するという、スタグフレーションの状態に陥ってしまいます。

 賃上げが進むことは基本的によいことですが、社会保障制度の改革など、消費者に安心感をもたらす政策を同時並行で実施しなければ、消費の喚起は難しいかもしれません。

(The Capital Tribune Japan)