宇宙空間にあるブラックホール。しかし、ブラックホールがどのような姿、形をしているのか見た人はいない。今、世界の科学者たちが巨大ブラックホールを写真にとらえようと挑んでいる。EHT(Event Horizon=事象の地平線 Telescope)プロジェクト。その日本チームの責任者を務める国立天文台水沢VLBI観測所所長の本間希樹氏に話を聞いた。

ブラックホールの黒い穴を見た人はいない

ブラックホールの想像図(国立天文台/And You Inc.)

── 「巨大ブラックホールの謎」という本を最近、出版されました。そもそも宇宙空間にはブラックホールが存在すると考えていいのでしょうか?

本間氏 この50年間で宇宙の観測が進み、いろんな現象をみるにつけ、少なくとも天文学的な証拠を積み上げるとブラックホールがあることに疑いはありません。ですから、ブラックホールがあるのは当たり前と考えられているわけですが、ブラックホールの存在を証明する最後の1ピース、ブラックホールの黒い穴、そこを見た人はまだいません。

── ブラックホールがあるのは間違いないけれど、見た人はいない?

本間氏 僕らが住む銀河系で言えば、太陽の400万倍の重さがあり、ほとんど光を出していない「いて座Aスター」という天体があることが観測によってわかっています。そういう天体はブラックホールとしか考えられないので、いて座Aスターはブラックホールだと考えられているわけです。しかし、それが本当に光さえ出てこられない強い重力を持ったブラックホールなのかどうかは最終的にはまだ確認されていません。

── 先生の著書のタイトルにあるようにブラックホールはまだ謎なのですね。

本間氏 ですから、ブラックホールの黒い穴、そこを写真に撮ろうと今、取り組んでいるのです。その黒い穴を見た人はまだおらず、厳密な科学の言葉で言えば、そこを見るまではブラックホールだと考えられている天体もブラックホールではないかもしれない、という言い方もできます。ブラックホールの黒い穴を写真に撮ることは最後の1ピース、非常に重要な1ピースなんです。そこを埋めることで、今、ブラックホールだと考えられている天体が本当にブラックホールだったと言えるようになります。

── とても興味深い取り組みです。

本間氏 もともとアメリカのシェップ・ドールマンらがはじめた取り組みで、今は国際的なプロジェクト(Event Horizon Telescope)として、世界13の機関・研究所、100人を超す研究者が参加しています。私自身は、このプロジェクトに10年くらい関わっています。現在、日本からは10人ほどの研究者がこのプロジェクトに参加していて、私が日本の研究チームの代表を務めています。