北朝鮮の弾道ミサイルが28日朝、日本上空を通過しました。発射から約4分後、日本政府はJアラート(全国瞬時警報システム)で避難を呼びかけましたが、実際に行動に移せた人はどれだけいたのでしょうか。防災の専門家は、Jアラートを聞いて避難しなかった人は、都合の悪い情報を無視または過小評価する「正常性バイアス」の心理に陥っていた可能性があると分析します。

緊迫感がなかったミサイルの上空通過

北朝鮮のミサイル発射を伝えるNHKニュース

 「ミサイル発射。ミサイル発射。北朝鮮からミサイルが発射された模様です。頑丈な建物か地下に避難して下さい」

 午前6時2分に発令されたJアラートを、NHKテレビで確認した人も多いのではないでしょうか。日本政府は、北朝鮮の弾道ミサイルが日本に飛来する可能性があると判断した場合、Jアラートで発射を伝え、頑丈な建物や地下への避難を呼びかけます。今回は、飛来の可能性がある12道県に発しました。

 ミサイルが北海道の渡島半島および襟裳岬上空を通過したのは、午前6時6分ごろ。Jアラート発令からわずか4分後でした。この短い時間で迅速に避難しなければなりませんが、実際はどうだったのでしょうか。

 ツイッターでは、「Jアラートに起こされた」と不満をもらす投稿と、それを諌める投稿が目に付きます。Jアラートを聞いても「どうして良いのやら」と戸惑ったという人や、避難したと話したらと笑われたという人の投稿も。これらからは、ミサイルが日本上空を通過したという緊迫感はあまり感じられません。今回、避難した住民の数や割合は不明ですが、避難しなかった人も相当いたのではないかと予想されます。

現在の政府の情報伝達では不十分

 『新・人は皆「自分だけは死なない」と思っている』(宝島社)という著書のある防災・危機管理アドバイザーの山村武彦氏(74)は、「正常性バイアスに陥ると、異常な事態であるにもかかわらず、正常だと認識してしまいます。Jアラートに慣れていない面もあるだろうが、北朝鮮は本気で攻撃しているのではなく、日本を狙っているわけではないから、ミサイルが発射されても自分のところには着弾しないだろう、と解釈したのではないでしょうか」と、避難しなかった人の心理を分析。正常性バイアスから脱して的確に行動するためには、正しい知識が必要と主張します。

 山村氏は、正しい知識を得る上で、現在の政府の情報伝達では不十分と指摘。「弾道ミサイルが着弾すれば、衝撃波や爆風、ガラスなどの破片が飛び散って大きな被害が出ますが、Jアラートが伝えるのは、“頑丈な建物か地下に避難する”ということだけです。なぜそうすべきなのかという理由についてもきちんと伝える必要があります。Jアラートが発令された北海道・東北地域は頑丈な建物や地下がないところも多くありますが、その場合にどうすべきなのかについても細かい説明がありません。正しい知識がないと、正しい行動も生まれないのです」

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