辞任もほのめかしたハリルホジッチ監督の采配が光った(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 歴史を変えた。これまでのワールドカップ予選で5分け2敗と未勝利だった、難敵・オーストラリア代表を一蹴。1試合を残してグループBの1位を確定させて、来年のロシア大会出場を決めた。

 先発に抜擢された22歳のFW浅野拓磨(シュツットガルト)が前半41分に先制点を、21歳のMF井手口陽介(ガンバ大阪)が後半37分にダメ押しとなる2点目をゲット。選手起用が鮮やかに的中した。

 守ってはハリルジャパンで初めて採用された「4‐1‐4‐1」布陣から繰り出される、怒涛のハイプレスが相手のポゼッションサッカーを寸断。シュートをわずか4本に封じて、無失点に抑え込んだ。

 埼玉スタジアムで8月31日に行われたワールドカップ・アジア最終予選第9戦。痛快無比な快勝劇に日本中のファンやサポーターが喝采をあげ、6大会連続6度目のヒノキ舞台出場の喜びを分かちあった。

 選手起用を含めて完璧な采配をふるったヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、勝利を告げるホイッスルが夜空に鳴り響いた瞬間、涙で瞳を潤ませていた。公式会見では、胸を張って選手たちを称えた。

「この勝利を日本国民全員に捧げたい。これまでたくさんの困難な状況があったし、今夜の相手も質の高いビッグチームだったが、選手たちが見せた英雄のような姿に私は誇りを感じている」

 オーストラリアとの90分間のために、2ヶ月以上もの準備時間を割いてきた。コンフェデレーションズカップが開催されたロシアへ足を運び、アジア王者として出場したオーストラリアを自分の目で視察した。

 今年に入ってオーストラリアは4バックから3バックへと変更。中盤の人数を増やし、恵まれた体格を生かした従来のロングボール主体のサッカーから、パスをつなぐスタイルへの転換を図ってきた。

「相手のことをすべて分析してきた。誰よりもオーストラリアのことを知っている」

 こう豪語する指揮官が弾き出した結論は、オーストラリアの変化が決して時限的なものではないということ。右ひざの手術を乗り越え、約9ヶ月ぶりに復帰したキャプテンのMF長谷部誠(フランクフルト)は、試合後にこう明かしている。

「ポゼッションサッカーをとことん突き詰めるという部分で、オーストラリアはどのような状況になろうとパスをつないでくる、というスカウティングがありました。相手にもたせて、そのうえでボールを奪う狙いどころを定めて、プレッシャーをかける部分では上手くいったのかなと」

 肉を切らせて骨を断つ、とでも形容すべきだろうか。日本が得意としてきたパス回しをあえて捨てた。ボール支配率は38.4%に甘んじたが、放ったシュートは15本とオーストラリアの4倍近くに達した。