北海道の最高峰、旭岳。手前はすり鉢池、7月末でも雪が残っている(撮影:倉谷清文)

 今年の1月、都内で行われたある移住・交流・地域おこしのイベントに行ってきた。およそ300もの地方自治体のブースが並び、わが町の魅力を伝えようと一生懸命PRに力を入れている。

 日本全体でも人口減少に転じている中、都市部への人口流出による減少の課題を抱えている自治体が多い。観光で訪れるならまだしも移住となるとそう簡単に決断できることではないだろう。

 しかし、その中でも人口減少を食い止め、増加へと転じさせている自治体がある。そんな町の一つ、北海道のほぼ中央に位置する東川町。その理由はなぜ、魅力はいったいどこにあるのだろうか。

フォト・ジャーナル<町民の心捉えた写真の町 北海道東川町>倉谷清文第7回

 東川の中心地からもよく見える大雪山連峰の最高峰旭岳(標高2,291m)。恥ずかしながら東川町に来るまで、大雪山とは一つの山だと思っていたが、旭岳を含む山群の名称であることを初めて知った。

 始発のロープウェイで山頂手前の姿見駅まで行き少し登ると、旭岳山頂をバックに白い小さなチングルマの花畑が広がっていた。ここは緯度が北にあるため、比較的低い標高でさまざまな高山植物が観察できる。6月から8月中頃にかけては一面のお花畑になる。8月の末には紅葉が始まり、日本で一番早く秋がやってくる場所と言われている。

 東川町に滞在中、町に暮らす多くの人たちと話す機会があった。30年ほど前、「写真の町」宣言をして地域を活性化していった東川町。その陰には、町職員の意識改革があった。

 過去に同町の職員でもあった松岡町長が2003年に就任し、役場の慣習的な「予算がない」「前例がない」「他の自治体でやってない」という三つの“ない”を言い訳にするのはもうやめようという方針を出した。そのリーダーシップのもと職員も後押しされ、自ら協賛企業獲得の営業に回ったり、イベント運営のスタッフとして取り組むようになっていった。その姿に町民も心を動かされ、ボランティアとして積極的に参加するようになっていったそうだ。

 雪国の人は冬の厳しい時期を毎年乗り越えているから我慢強いと聞いたことがあるが、写真という今までにない文化的事業で町おこしということを継続してこられたのは、北海道の人口わずか数千人のこの東川だったからできたのかもしれない。

 1950(昭和25)年に1万人を超えていた人口が1993(平成5)年には7千人を切ってしまった。それが「写真の町」事業等をきっかけに現在では8千人を超えるほどになった。

 松岡町長は言う。「ただ人が増えればよいということではない。都会にはない田舎の良さがある。過疎でもない、過密でもない、“適疎”(適当に疎が存在する)が理想なんです」。

 東川町を去る時、町のことをいろいろ教えていただいた役場の高木さんに挨拶をして出てきた。奥のほうから、電話応対する女性職員の明るい声がしていた。「はい、『写真の町』東川町です」。

(2017年7、8月撮影・文:倉谷清文)

※この記事はTHE PAGEの写真家・倉谷清文さんの「フォト・ジャーナル<町民の心捉えた写真の町 北海道東川町>倉谷清文第7回」の一部を抜粋しました。