[写真]民進党の新代表に選ばれた前原氏。選出直後のあいさつでは「非常に難しい船出」と語った(ロイター/アフロ)

 民進党の新しい代表に前原誠司元外相が選ばれました。国会議員票、地方票を合わせた結果、前原氏が502ポイントを獲得し、枝野幸男元官房長官に170ポイント差をつけて一騎打ちを制しました。しかし直後のあいさつで「非常に難しい船出」と前原氏が語ったように、新代表は党勢の回復という重責を担います。選挙での敗北が続き、離党者が相次ぐ民進党の行く末は、分裂なのか、党再生はなるのか。政治学者の内山融・東京大学大学院教授に展望してもらいました。

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 9月1日に民進党代表選挙が行われ、元外相の前原誠司氏が新代表に選出された。前原氏を支持したのは、大畠章宏元幹事長のグループ、松野頼久氏のグループ、旧民社党系のグループなどであり、枝野氏を支持したのは旧社会党系のグループが中心であった。結果として、ポイント配分で比重が高い国会議員票で大きく差をつけ(前原氏は83票、枝野氏は51票)、前原氏が勝利した。

代表選を通じて見えた大まかな政策の「軸」

 今回の代表選は前原氏と枝野氏の一騎打ちであった。以前から民進党内に存在する保守とリベラルの対立軸が顕在化したといえよう。すなわち、基本的に憲法改正に積極的で、共産党を含めた野党共闘に消極的な前原氏は保守派を代表し、護憲派に近く、共産党との共闘も容認する枝野氏がリベラル派を代表するという構図である。

 具体的な争点となったのは、野党共闘、消費税率引き上げ、原発、憲法改正などであった。

[写真]代表選をともに戦った枝野氏(右から2人目)とは目指す社会像では概ね一致していた(ロイター/アフロ)

 野党共闘については、前原氏が「枠組みありきでは選挙互助会、野合と言われる」として、共産党を含めた共闘を見直す可能性に言及していた。枝野氏は、「協力・応援してくれる人を排除する理由はない」として、これまでの野党共闘を継続する立場であった。

 2019年10月に予定されている消費税率の10%への引き上げについて、前原氏は、引き上げを容認した上で、増税分をすべて社会保障の充実にあてる方針を示した。枝野氏は「当面は上げない」と明言していた。

 原発に関しては、前原氏は「2030年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」という党の既定方針を維持する意向である。枝野氏は「一日も早く原発ゼロを実現する」として、「2030年代原発ゼロ」の目標を前倒しで実施する方針であった。

 憲法改正については、元来は両氏のスタンスに違いがあったはずだが、今回の代表選ではその違いは際立たなかった。前原氏は以前から、自衛隊を憲法9条に明記するという改正案を主張してきた。これは安倍首相が提案する9条改正案に近い立場であるが、今回の代表選に際しては、「拙速な首相のタイムスケジュールには与(くみ)しない」としてその持論を封印した。枝野氏も、安倍首相が主張する9条改正案への反対を強調してきている。安倍首相の進める9条改正案には乗らないことで足並みを揃えた形である。

 以上のような争点に加え、アベノミクスに代わる経済政策として何を打ち出すか、どのような社会像を理想とするのかといった争点も、再び政権党を目指す上で欠かすことはできない。

 実は、こうした争点、つまり目指す社会像や経済・社会保障政策といった面では、前原氏と枝野氏は大きく違っていなかった。前原氏は「All for All(みんながみんなのために)」を標榜し、枝野氏は「お互いさまに支え合う社会」を訴えた。表現こそ違うが、社会保障や再分配の充実、社会の連帯を重視する点で共通したものを持っている。

 このように、今回の代表選では野党共闘や消費増税などで路線の違いが見られたものの、経済・社会保障政策面では、党として一致できる大まかな方向性が見えてきたように思える。自民党と差異化し、有権者にアピールする争点としても有効であろう。

 つまり、アベノミクスを進める自民党が、市場経済を重視し自助を基調とする自己責任型の社会に向かうとすれば、民進党は、人々の協力によりお互いを支えあう連帯型の社会を強調すべきであろう。

 注意してほしいのは、社会保障や経済運営における国家の役割を大きくするだけでは不適当だということである。市場経済だけに任せてはいけないことは多々あるが、かといって、現在の財政赤字の大きさや国際競争などを考えると、国家の役割を増大させることには限界がある。限られた国家の役割を有効に活用し、政策の成果を最大限に引き出すためには、人々の相互協力や連帯がその基盤になくてはならない。こうした相互協力や連帯こそが、国家や民主主義を支えるのである。

 前原氏の「All for All」も、枝野氏の「お互いさまに支え合う社会」も、協力や連帯に基づくという点で変わりがない。他の争点で細かい違いは残っても、このような方向で党をまとめていく可能性が見えてきたのではないか。

 資本主義と社会主義が対立軸であった20世紀とは異なり、現在は政党間の政策が収斂(れん)しがちで、政策選択の幅は以前より狭まった。しかし、目指す社会像や理念・哲学の面で与党と差異化することはまだ可能である。自民党とは異なる理念・哲学を掲げ、将来の政権奪還に向けて有権者に積極的にアピールしていくべきであろう。

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