日本のどこにでも起きうることを「前提」に

 この「言い訳」は、先輩が作った法律をなんとか延命させたい役人たちにとっては、重要な拠りどころになる文言にちがいありません。また、大震法を成立させるときに「科学的」裏付けを与え、その後も大震法のおかげで予算や人事の面で潤ってきた学者たちの利権を守るためのものでしょう。

 ですが、これらの言い訳は希望的な予測にすぎず、科学として裏付けられているものではありません。法律を存続させるためには、学問的にはあまりにも薄弱な「仮説」にすぎないのです。

 この委員会は「大震法」は結論を先送りしただけではなくて、「居座り宣言」や「システム継続宣言」や「予算措置継続宣言」への筋道をつけたということかもしれないのです。

 いま、本当に大事なのは、南海トラフ地震や東海地震のような特定の地震だけに注力するのではなくて、日本のどこにでも大地震が起きうるということを「前提」にして、日本の防災体制を組み直すことでしょう。


■島村英紀(しまむら・ひでき) 武蔵野学院大学特任教授。1941年東京生。東京教育大付属高卒。東大理学部卒。東大大学院終了。理学博士。東大助手、北海道大学教授、北海道大学地震火山研究観測センター長、国立極地研究所長などを歴任。専門は地球物理学。2013年5月から『夕刊フジ』に『警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識』を毎週連載中。著書の『火山入門――日本誕生から破局噴火まで』2015年5月初版。NHK新書。『油断大敵! 生死を分ける地震の基礎知識60』(花伝社)2015年12月初版。花伝社。『人はなぜ御用学者になるのか――地震と原発』2013年7月初版。花伝社。など多数

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