[写真]勢いよくきれいな水を噴き出す「安心の蛇口」

 地震などの災害時でも蛇口からきれいな水を――。この「安心の蛇口」事業に全県的に取り組んでいるのが長野県です。先月24日には坂城町(さかきまち)で、新たな安心の蛇口の通水式がありました。災害時に出動する給水車は給水量に限りがあったり、給水を受けて遠くまで運ぶ手間などが被災者の負担にもなっています。安心の蛇口は、学校など重要な施設に至る水道管を丈夫に耐震化し、被災後も問題なく給水できる仕組み。災害時に被災者を励ます希望のシンボルとしても期待されています。

県内20か所の設置目指す

 「安心の蛇口」は発電、県営水道の2事業を行っている長野県企業局(公営企業)が設置を進めており、坂城町での通水は千曲市、上田市に次いで県内3番目。企業局は平成37(2025)年までに長野県内20か所への設置を目指しています。

 その仕組みは、水源地から「安心の蛇口」設置場所までの水道管を耐震化し、大きな地震などでも水道管が壊れないようにして給水を確保します。企業局によると、従来の水道管は地震などで大きな衝撃を受けると水道管が曲がったり接続部分が外れて断水しましたが、耐震の水道管は衝撃に強い粘りのある金属管を使ったり、接続部分で外圧を逃がす工夫をしたりして壊れにくくしてあります。2016年4月の熊本地震でも長期の断水はあったが、耐震水道管には被害がなかった(企業局)とされています。

[写真]地下の水道管と直結する給水用のホース

 実際の運用は、災害で断水時に耐震水道管に太いホースをつなぎ、ホースの先に組み立て式の「応急給水栓」を取り付けます。応急給水栓には10個ほどの蛇口が取り付けてあり、水道管からの水を供給すると全部の蛇口で同時に給水ができます。太い水道管に直結しているので、水圧は強すぎるほどです。

 給水車で順番を待つのに比べ何倍もの給水能力を発揮できるほか、災害時にもかかわらず管理された安全な水道水をいつも通り十分に使えるのが大きな利点です。「安心の蛇口」を接続する水道管がある場所には組み立て式の応急給水栓も格納してあり、災害時に住民が組み立ててすぐ使うことができます。

 災害時に大切な水が十分に使えることは「被災者を元気づけることになる」として、耐震水道管の近くには「安心の蛇口」と表記した水飲み場も併設。住民や子どもたちが「災害時に利用できる水だ」といつも意識できるようにアピールしています。

 通水式に臨んだ坂城町の山村弘町長は「今後町内3か所に設置を進めてもらい、合わせて4地区で災害時に活用できるようにしたい。災害があっても、とにかくここに来ればきれいな水が十分あるということになり、ありがたい。この水飲み場を見たり利用することで防災意識が高まり、子どもたちの防災教育にも役立つと思う」と話しています。

 企業局は今後「安心の蛇口」を設ける場所として小中学校や病院、避難場所となる公園などを災害時の「重要給水施設」と位置づけ、水源地からの水道管の耐震化を進める方針です。企業局は、耐震水道管による全県的な災害時の給水確保事業は全国でも珍しいのではないかと見ています。


■高越良一(たかごし・りょういち) 信濃毎日新聞記者・編集者、長野市民新聞編集者からライター。この間2年地元TVでニュース解説

この記事が気に入ったら「いいね!」をお願いします