ミケランジェロ作「システィナ礼拝堂天井画」の一部「大地と水の分離」。聖書における地球誕生の様子が描かれている。「紀元前4004年=地球誕生」という説を、近代地質学はどのようにして覆したのだろうか。

 地球誕生は46億年前、そして生命が生まれたのは約40億年前。私たちがこの答えを導くはるか昔から、人々は、自分たちが暮らす大地はどのように出来上がり、人類が出現したのだろう、と疑問を持ち、宗教の教えの中から真実を見出そうとしてきました。

 そして、天地創造は紀元前4004年(現在から約6000年前)とした聖書の教義を補おうと科学者たちが研究を進め、やがて現在の地質学の成果へとつながっていきます。古生物学者の池尻武仁博士(米国アラバマ自然史博物館客員研究員・アラバマ大地質科学部講師)が、執筆します。


北米アラバマより“生物40億年のメッセージ”

キリスト教圏における地質年代

 前回の記事において少し触れたが、旧約聖書の中には、はっきり地球が誕生した具体的な年(数値)は記されていない。そのため教会の知識人や多数の科学者は、歴史を通して聖書における情報をもとに、さまざまな解釈や推定を行ってきた。
https://thepage.jp/detail/20170831-00000005-wordleaf

 例えば最も古い例の一つとして、西暦169年にセレウコス朝シリア王国の第6代主教テオピロスが算出した、「紀元前5529年」という年代がある。3世紀前半には、ユリウス・アフリカヌスが「紀元前5000年」という数字を発表した。その後も聖書 ── 特に「創世記」の各章 ── をもとにした地球年代の測定は、繰り返し行われてきた。一連の推定値はいくらか細かな違いはあるものの、(私の知る限り)ほぼ紀元前4000―6000年あたりで一致しているようだ。今から約6000から8000年前にあたる。

 そしてアイルランドのキリスト教指導者・教育者ジェームス・ユゥシャー(James Usher:1581―1665)は、地球が「紀元前4004年10月23日」に誕生したという考えを、17世紀に発表した。(ちなみにその日は日曜日だった。)

 歴史上、このユゥシャーの「紀元前4004年=地球誕生」という説は非常に重要だ。1701年にキリスト教圏において、「正式な教義」として採用されたからだ。以来、世界各地で今日まで(曲がりなりにも)受け継がれている、この聖書にもとづく地球の年代は、ユゥシャーの研究によるものだ。

 紀元前4004年前。地球は2017年現在において「6021歳」という計算になる。歴史上、日本では弥生時代(後期)の真っ只中だ。古代エジプト文明が誕生したのは紀元前3000年前頃と、一般に考えられている。

 現在の日本人の常識や感覚からすると、地球6021年歳という数字は「ありえない」だろう。キリスト教がメインの宗教として根付いているヨーロッパ各国においても、21世紀の今日、おおむね同じような反応が返ってくる。ドイツやフランス、オランダ、スペインの友人に、私は機会がある度に、この件について尋ねてきた。返ってくる答えは、大きなスマイルとともに、いつも決まって「過去の遺物」という返事だ。

 (注:どうしてアメリカの各地域において現在でも、この聖書による地球年代が信じられているのか、疑問に思う方がいるかもしれない。私が個人的に見るところ、歴史・宗教・政治・経済などの諸事情が複雑に絡み合っているようだ。そしてなかなかデリケートな問題で、しっかりした説明も必要だろう。そのためここではあえては省かせていただく。)

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