[写真]ドイツ・フランクフルトの金融街。イギリスのEU離脱に伴い、存在感を増している(撮影:仲野博文)

 8000万を超える人口を抱え、世界第4位のGDPを誇るドイツ。筆者は8月前半にドイツと周辺国に2週間滞在し、「ヨーロッパ」の枠を超えて存在感を高めるドイツの現在や、ドイツの周辺国で日増しに高まるロシアの脅威に対する警戒感について、多くの市民やジャーナリスト、大学教授らから話を聞いた。ヨーロッパ地域における事実上のリーダーとなったドイツは今後どのような国へと変わっていくのか。また、周辺国やロシア、アメリカといった国々との関係に変化は生じるのか。外交、経済、難民問題、欧州連合(EU)における立ち位置などから、大国ドイツの現在に目を向けてみる。全5回となる連載の2回目は、イギリスのEU離脱まで2年を切る中、ドイツの国内経済に注がれる期待と不安について紹介する。

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「シティ」から「マインハッタン」へ

[地図]ドイツの地図

 フランクフルトは興味深い町だ。ドイツ国内では最大規模となる国際空港が市中心部からわずか10キロの場所にあり、ヨーロッパでも屈指の金融街があることでも知られており、ライン川に沿う形で他の町に向かう観光客らが最初のスタート地点として滞在する場所でもある。『ファウスト』などの名作で知られる作家のゲーテはフランクフルトで生まれており、本格的な作家活動を行う前の20代前半の頃にはこの町で弁護士業をスタートさせている。

 ゲーテの生家である「ゲーテハウス」はフランクフルトの人気観光スポットとなっているが、ゲーテ誕生以前からフランクフルトは重要な都市として多くの人が行き交う、活気ある町であった。13世紀には主要な都市の1つとして「ライン都市同盟」に加盟している。この頃のドイツは国内が現在のように統一されていなかったため、主要な町は自衛とスムーズな交易を求めて同盟を結成。ライン都市同盟にはスイスのチューリッヒやフランスのシュトラスブルクも加盟していた。市内には町の古い歴史を垣間見ることができる建造物なども残っているが、現在のフランクフルトは観光客以上に金融業界の関係者を引きつける町となっている。EU離脱後のイギリスから多くの金融機関がフランクフルトに人員やオフィスを移す公算が大きくなっている現在、金融センターとしてのフランクフルトにはこれまでにない注目が集まっている。

 一般的にフランクフルトといえば、ゲーテの生まれ育ったこのフランクフルトを意味するが、ドイツにはもう一つ、ポーランド国境にもフランクフルトという町がある。この東側にあるフランクフルトは、混同を避けるために「オーデル川沿いのフランクフルト」という正式名称があり、金融センターのフランクフルトは「マイン川沿いのフランクフルト(フランクフルト・アム・マイン)」だ。ドイツの都市としては珍しい、金融機関の高層ビルが多く建ち並ぶフランクフルトの光景はニューヨークに似ているとの指摘もあり、「マイン川」と「マンハッタン」を組み合わせて「マインハッタン」と呼ばれるようになった。

 長年にわたって、毎日ボンから電車通勤する金融機関勤務の男性は、ある意味でドイツらしくないフランクフルトの高層ビル群を指差して、町の景色だけではなく国際金融センターとしての町の意識にも大きな変化が出始めたと語る。

「フランクフルト国際空港や、他の町から鉄道を使ってこの町にやって来る人が最初に目にするのは、フランクフルト中央駅周辺の街並みだ。駅から数分も歩けば、売春宿やポルノショップが並ぶエリアに入る。フランクフルトの第一印象がそれではまずいのではないかという声が強まり、駅周辺では10年ほど前からドラッグ中毒者や大騒ぎする若者らを警察官が取り締まるようになった。町として、金融センターとドイツの玄関口としてのフランクフルトのイメージを対外的にアピールしているように思える」

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