リンディ・ホップとジルバは、旧世界を破壊する勢い

ジルバを踊る人たち(New York World-Telegram and the Sun staff photographer: Fisher, Alan, photographer)

 ジャズ・エイジと言われる1920年代をイメージするチャールストンという当時大流行したダンスをよく映画などでみることができる。これも黒人文化が時代と溶け合った風景だが、本来の黒人のダンス文化は、もっと自由で気ままで型にはまらない。そういう意味では、ハーレムで生まれたリンディ・ホップは、その後に大きな影響を及ぼしたダンスであることは間違いない。女性が飛び跳ね、回転し、やりようによってはアクロバティックにいかようにも工夫できるもので、これは様々なバリエーションも生んだ。

 第2次世界大戦後、駐留軍によって日本にもダンス文化が花開いたが、そこで大流行したのが、リンディ・ホップを起源とするジルバだった。ちなみにジルバとはまったくの日本語で海外では通じない。正式にはジターバグで、どこかで聞き間違え定着したものだが、いかにも日本語としておさまりがよく、もはや変えようのない言葉だろう。

 この踊りには、旧世界を破壊する勢いがある。この心地よい躍動は、新時代を謳歌する若者たちのエネルギーであり、日本の戦後文化を象徴するが、実は事情はアメリカでも同じで、4ビートのジャズのビートを強くするとリンディ・ホップ、ジルバのノリになる。映画『ベニー・グッドマン物語』にこういうシーンがある。普通のダンス・ホールのシーンは、穏やかにダンスを楽しむ人々の風景だが、後半のすでに人気を得たグッドマンのホール公演で、入りきれないファンが客席になだれ込むと、通路で若者たちがリンディ・ホップ、ジルバを踊りだすのだ。

 スイングの時代とは、その背後にこういう若者たちの新しいエネルギーがあったのだろう。見よう見まねで黒人たちの踊りの楽しさを知り、そして、彼らはシナトラに夢中になる。その溌剌とした感性は、大人たちを打ちのめす。感性としては、すでにロックの起源でもある。

(文・青木和富)

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