神奈川県の住民は年間100万円も通勤費をかけているというニュースが話題となっています。働き方改革が注目される中、通勤時間の長さやそのコストにあらためて注目が集まりそうです。

(写真:アフロ)

 内閣府がまとめた報告書によると、都道府県別の通勤コストがもっとも高かったのは神奈川県で年間97.7万円と100万円近くに達していました。もっとも安かったのは宮崎県の31.2万円ですから、年間60万円もの差がついていることになります。

 実はこの試算は、通勤費を直接調べたものではなく、平均的な通勤時間に時給をかけてコストを算出し、さらに追加の住宅コスト(家賃が他と比べて高い部分の追加費用)を加えたものですので、あくまで理論的なコストということになります(経済学的に言うと機会費用)。通勤時間が長ければ長いほど、平均時給が高ければ高いほど、家賃が高いほど、多く算出されるという仕組みなのですが、ひとつの有益な指標であることは間違いないでしょう。

 実際、総務省が行った社会生活基本調査では、神奈川県の平均通勤時間は1時間40分で全国トップでした。1人あたりの県民所得も292万円と神奈川県は全国でも比較的高い部類に入りますから、両者を掛け合わせた理論的な通勤コストも上昇することになります。要するに通勤コストの問題は、通勤時間そのものの問題と考えてよいわけです。

 日本人の通勤時間の長さは世界でも突出しており、これが生活全般を圧迫し、生産性にもマイナスの影響を与えているという指摘は以前から存在していました。

 日本は土地が狭く人口密度が高いのでどうしようもないのだという意見がありますが、東京の人口密度は諸外国と比較すると突出して高いわけではありません。

 東京の人口密度が高いとされるときは、例えば東京都とニューヨーク州といった単純な行政区分間の比較や、東京に他の都市を加えるなどした経済圏レベルでの比較においてです。東京やロンドンの中心部、マンハッタン、パリ市といった都心部で比べた場合(この比較では面積も同程度になります)、マンハッタン、パリの方が高く、東京の2倍以上もあるというのが現実です。

 昭和の時代はまだ貧しく、コストが安い郊外を中心に宅地開発せざるを得ませんでした。鉄道を使って郊外の家から通勤するという昭和的なライフスタイルが定着してしまい、その後も都市部の住宅整備が進まなかったことが、通勤時間が長くなってしまった最大の原因です。

 このところ郊外から都市部に転居する人が増えていますが、こうした通勤コストのムダが強く意識されてきた結果と考えられます。すでに遠い場所に住宅を購入してしまった人は通勤時間を変えることができませんから、状況を改善するためには、在宅勤務など多様な働き方を進めていくことが重要になるでしょう。

(The Capital Tribune Japan)

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