ハリルホジッチ監督は異例の18分間の講義で何を伝えたかったのか。(写真:田村翔/アフロスポーツ)

 いったい何が始まるのか。記者会見場となった東京・文京区のJFAハウス1階、日本サッカーミュージアム内の「ヴァーチャルスタジアム」に集まったメディアがざわついた。

 28日午後3時から始まった、ニュージーランド代表(10月6日@豊田スタジアム)、ハイチ代表(同10日@日産スタジアム)との国際親善試合に臨む日本代表メンバー発表会見。司会進行役の日本サッカー協会広報が冒頭で断りを入れた。

「メンバー発表記者会見を始める前に、ハリルホジッチ監督からお話がございます」
ひな壇に座っていたヴァイッド・ハリルホジッチ監督が、おもむろに立ちあがる。左側にあったホワイトボードにかけられていた紙をめくると、7項目から成るデータが手書きで記されていた。

「私が日本に来てから、指導者の方からもメディアの方からも『ポゼッション』という言葉をよく耳にする。日本のサッカー教育はポゼッションをベースに作られていると感じるが、ポゼッションが高ければ勝てるというのは真実ではない」

 そして、約半日前の現地時間27日夜にパルク・デ・フランスで行われた、パリ・サンジェルマンとバイエルン・ミュンヘンによる、UEFAチャンピオンズリーグのグループリーグ第2節を例として説明し始めた。

 7項目のデータとは双方のポゼッション率、パス総数、シュート数、CK数、クロス数、デュエルの成功率、そして最終スコア。試合はパリが3‐0でバイエルンに快勝したが、ポゼッション率はパリが37.6%とドイツ王者の62.4%を大きく下回っていた。

 自身もFWとしてプレーし、監督も務めた古巣の快勝を称賛しながら、指揮官は「見てほしいのはポゼッション率だ」と力説した。

「バイエルンが支配していたと言える。パス総数は368本と568本、シュート数は12本と16本でどちらもバイエルンが多い。CKはパリの1本に対してバイエルンが18本、クロスは4本に対して36本だが、ここでパリが上回った数字が出てくる。デュエルの成功率だ」

 フランス語で「決闘」を意味する「デュエル」は2015年3月の就任以来、指揮官が口を酸っぱくしながら選手たちに要求し、メディアの前でも口にしてきたキーワードだ。

 件の一戦におけるデュエルの成功率は、パリの57.4%に対してバイエルンが42.6%。相手のパス回しを肝心な局面でパリのデュエルが断ち切り、カウンターからエディンソン・カバーニ、ネイマールの両FWが誇る高い決定力を生かした作戦が勝因だと結論づけた。

「デュエルの成功率は地上戦、空中戦ともに重要な数値となる。繰り返しになるが、ポゼッションのみではまったく意味がない。モダンサッカーでは、ゲームプランとコントロールに合わせて準備しなければならない。たとえば引いてブロックを作るのもひとつのやり方で、パリはそれを利用した」
  

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