[資料写真]ノーベル賞のメダル授与式(ロイター/アフロ)

 2017年のノーベル賞発表まで一週間を切りました。10月2日(月)の生理学・医学賞を皮切りに、3日(火)に物理学賞、4日(水)は化学賞と自然科学3賞を発表。平和賞は6日(金)、経済学賞は9日(月)です(文学賞は未定)。日本科学未来館では毎年、その年の自然科学系3賞を受賞するにふさわしいと思う研究テーマ・研究者を同館の科学コミュニケーターが各賞ごとに紹介しています。

 生理学・医学賞は「病気の解明や治療法の開発」、「生命科学の研究に欠かせない技術の開発」、「生命の基礎メカニズムの解明」といった研究が毎年の受賞テーマになっています。昨年は「オートファジー(自食作用)の仕組みの発見」で東京工業大学の大隅良典栄誉教授が受賞しました。オートファジーとは細胞の中のお掃除係。つまり、昨年は「生命の基礎メカニズムの解明」が選ばれたわけです。そうすると今年は残りの2テーマの可能性が高いのでしょうか?科学コミュニケーターが予想する2つの研究を紹介します。

【図】2016年ノーベル賞 大隅氏の「オートファジー」なぜ細胞の中身を“壊す”のが大事?

心臓・脳血管疾患から現代人を救う、コレステロール低下薬「スタチン」発見

[写真]遠藤章博士(写真提供:株式会社 バイオファーム研究所)

《遠藤章(えんどう・あきら)東京農工大学特別栄誉教授》

 「コレステロールの増えすぎは健康に良くない」という話はかなり世間に浸透しつつありますね。しかし、遠藤博士は多くの人にとって「コレステロール?何それ?」という時代に、飽食や運動不足でいずれはコレステロールに悩む時代が来るだろうと予想し、血中コレステロールを低下させる薬「スタチン」の開発を始めました。

 ここでは「コレステロールとはそもそも何?」という基本から遠藤博士の功績までを紹介します。

 コレステロールは、脂質の一種で、細胞の膜や胆汁、ホルモンの材料として私たちの身体になくてはならない物質です。ですが、血中のコレステロール値が高い状態が続くと、いわゆる「動脈硬化」の原因となります。動脈硬化は本人が気づかないまま症状が進み、心臓血管疾患や脳血管疾患などの命にかかわる病気を引き起こしてしまうおそれがあります。

 この動脈硬化には「コレステロールの運び屋」であるLDLコレステロールとHDLコレステロールが大きな役割を果たします。LDLコレステロールは血管を通して身体中の必要な組織にコレステロールを届け、HDLコレステロールは身体中の組織から余分なコレステロールを回収して肝臓に戻します。バランスがとれた状態であればいいのですが、組織が必要とする以上のコレステロールがあると、血液中のLDLコレステロール値が高くなりすぎ、動脈硬化を引き起こしてしまうのです。