「イグノーベル賞」に今年も日本人研究者が選ばれました。イグノーベル賞とは、人々を笑わせ、そして考えさせられる研究を対象としたユニークな賞で、様々な分野の研究などから10タイトルが毎年選ばれています。日本は受賞の多い国で、2007年から11年連続の受賞となりました。

 今年の受賞は、「交尾器が雌雄で逆転した昆虫の発見」。北海道大学の吉澤和徳准教授、慶応大学の上村佳孝准教授、そしてブラジルのRodrigo Ferreira(ロドリゴ・フェレイラ)氏、スイスのCharles Lienhard(チャールズ・リーンハード)氏が共同研究として受賞されました。

[写真]トリカヘチャタテムシを採集したブラジル国内の洞窟にて

 端的にいうと、雄にあるはずのペニスが雄にはなく、ないはずの雌にペニスがついている、という虫を発見したという非常に分かりやすい内容です。しかし、この「トリカヘチャタテムシ」における発見は、雄雌の概念に一石を投じる大きな発見であるのは間違いありません。
授賞式からおよそ5日後、奇跡的に吉澤和徳先生とお会いする機会があり、発見の意味や受賞に対しての気持ち、そして今後の研究の展望について聞きました。

私たちがやってきたことは分類学の積み重ね

――先生はツイッターで、たまたま自分たちが受賞したというだけのことで、研究のきっかけは、分類学者や形態学者が行ってきた未知のものを掘り起こすというごく普通のもの。分類学、形態学が賞をもらったのだ、とおっしゃっていました。その思いを聞かせてください。

吉澤:イグノーベル賞は好きだったので毎年注目していましたし、自分が受賞した後にこんなことを言うのも何ですが、個人的にはある意味でノーベル賞よりもすごい賞だと昔から思っていました。イグノーベル賞というのは、その人がしなければ世の中に出ることがなかったような研究が選ばれていて、そこが魅力的でした。

 でも、そういった視点に立つと、私たちがやってきたことは分類学の積み重ね。モノの見方を変えたり、特異な実験を行ったわけではないので、私のイメージするイグノーベル賞とは少し違って感じました。私ではなくても、いずれ誰かが、同じような研究で同じような功績を上げたろうと思います。今よりも分類学、形態学の分野の幅を広げ、研究できる環境が得られれば、今回のような発見は、もっと出てくるだろうし、珍しくない分野だと思っているのです。我々の受賞理由は、受賞した人(の研究)が面白いのではなくて、トリカヘチャタテムシ自身の面白さが評価された、と考えています。それがツイッターで私の言いたかったことです。

 そうはいっても、トリカヘチャタテムシに出会えたことは幸運であったし、他にもさまざまな偶然が重なり、それによって運良く受賞できたことに対して感謝したいです。イグノーベル賞のコンセプトである人を笑わせ、考えさせる研究であったという点では、まさにぴったりな研究内容だったと感じています。

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