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 宅配便最大手のヤマト運輸が、アマゾン向けの配送料について値上げを実施することで合意に達したと報道されています。もし事実であれば、ヤマトの利益率は大きく改善しますが、同社は未払い残業代の支払いなどで大幅な赤字に転落しています。アマゾン向けの値上げがストレートに業績拡大につながるのかは微妙なところです。

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 報道によると、ヤマトとアマゾンは配送料について4割程度の値上げで合意に達したとのことです。ヤマトが配送した宅急便の荷物の数は、2015年度は17億3100万個、2016年度は18億6700万個となっており、このうちアマゾンからの依頼は全体の1割以上を占めるともいわれます。2017年度の取扱量は20億個を突破する見通しでしたが、現場が回らなくなっていることから、ヤマトは取扱量の削減と値上げの検討を開始。個人向けについては10月1日から15%程度の値上げを実施しています。

 しかし、ネット通販など大口顧客との価格交渉は難航し、なかなかまとまりませんでした。大口顧客の場合、大幅な割引価格が設定されていることに加え、顧客ごとに条件はバラバラとなっているはずですから、同時並行で交渉を進めることはそう容易ではないでしょう。

 アマゾン向けの配送は数が多いため、配送料金は安く設定されており、平均すると300円前後ともいわれます。アマゾンからの取扱量が全体の1割と仮定し、4割の値上げが実施された場合、ヤマトには約230億円の増益効果が見込める計算となります。

 これでヤマトの業績が順調に拡大するのかというと必ずしもそうとはいえません。ヤマトはこれまで従業員に支払うべき残業代の一部を支払っていなかったことが明らかとなっており、未払いの残業代を支払ったことで業績が悪化。2017年4~6月期の決算では100億円の営業赤字に転落しました。同社は今後、サービス残業などを防ぐ目的で、夜間を中心に1万人の契約社員を確保する予定となっており、そのコストは3年間で1000億円程度になるともいわれます。今回の増益分が、スムーズに最終的な利益の上乗せにつながるのかは微妙なところでしょう。

 これはヤマトに限った話ではありませんが、大手の運送会社は多くの零細運送事業者を下請けとして使っています。こうした下請けの運送事業者は個人事業主であることも多く、中には労働者として保護されないまま、厳しい環境で仕事に従事するケースもあるといわれています。

 物流のコストを適正化していくためには、正社員や契約社員に対して決められた賃金を支払うのはもちろんのこと、下請け業務に従事している事実上の労働者についても相応の報酬を支払うなど、業界全体での取り組みが必要となるでしょう。

(The Capital Tribune Japan)

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