ド軍に途中移籍したダルビッシュは明日の地区シリーズ初先発で集大成を見せる(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

ドジャー・スタジアムの客席は下から上へと徐々に深い色となり、夕暮れの空の移り変わりを表現している。陽も傾き、ちょうど空の色が三階席のシートに塗られたくすんだ青に変わりつつある時間、ドジャースのダルビッシュ有がレフトポール脇にあるブルペンに入った。

 マウンドに立ち、左足を地面に這わせるようにして踏み出すと、ボールは投げずに、腰を落とし、大きく股を広げたままの状態で体を左右に動かす。最後は右足に体重を乗せ、弓を弾くかのごとく、反動を使って立ったままの捕手に向かって腕を振った。

 それを2回、3回と繰り返し、捕手を座らせて投げ始めると、その日は「体が重い」と感じたというダルビッシュだったが、最後は三方を壁に囲まれたブルペンにミットの乾いた音を響かせている。

 9月25日ーーレギュラーシーズンでは最後の登板となったその日、ダルビッシュはパドレス打線を7回まで2安打、1失点に抑え、自分との戦いにピリオドを打った。

 図らずも、回り道は長くなった。

 8月16日、ホワイトソックス戦に先発すると、腰に軽い張りを訴え、途中降板した。大事をとって10日間の故障者リスト入りをしたが、ダルビッシュはその時間を利用して、フォームの修正に取り組んだ。ドジャースのリック・ハニカット投手コーチから、投げる時に左肩の位置が上がっているので、左右を出来るだけ平行にしたらどうか、というアドバイスがあったのがきっかけで、昨年5月にトミー・ジョン手術から復帰してから、高い位置にあったリリースポイントを下げている。

「(復帰してから)たぶん肘のことを気にしながら投げていた。もともと横振りの投げ方をするんですけど、それがかなり縦振りになっていたので、スライダーが思うようにいかない試合があった。基本的に変化球を元のクオリティに戻すということで、今はかなり(体の使い方を)横振りに」

 ただ、なかなか結果が伴わない。フォームを変えて臨んだ最初の試合(8月27日)は、5回、6安打、3失点だった。続く9月2日のパドレス戦では、4回0/3を投げて、8安打、5失点だった。

 この時はステップがおかしくなり、「一番めんどくさいのは、自分の思っていることとやっていることが違っている状態で、自分はそれが出来ていると勘違いしてしまっているときが問題」と吐露。
 自分では真っ直ぐのつもりでもインステップしていたようで、ダルビッシュはそれを「脳がバグっている」と形容したが、試合では序盤、打者と対戦するどころではなかった。

「踏み出しの足を左のバッターボックスの方に向かって出そうという意識があった。この前のブルペンが終わった後に、インステップしまくってるから、こっち(左打席)に向かって出せば、真っ直ぐいけるんじゃないかってことで、初回はそこを意識したけど、それを意識しちゃうと肩とか、他のこととか、一気に(全部は)意識できないので、それがちょっと疎かになってた。今はあまりにもいろんなフォームの変更がある。今までの中でも、ここまで変更の幅が大きいことはなかった。投げる中でも、意識しなきゃいけないポイントが多すぎる」

 試行錯誤している時、往々にしてダルビッシュは多弁になるが、8日のロッキーズ戦ではリリースポイントを戻し、グラブを高く構えた。
「(グラブの位置は)意識はしました、もちろん。見たら分かると思うけど」。

 同時に、投げるテンポを変えている。

「僕は足を上げてからリリースするまでに考えたり、(ボール)持っている時間が他の投手より長い。長く使えるっていうのが僕のいいところなんですけど、それが調子が悪くなってしまうと、長い時間を使える分、いろんなことを詰め込んで一定の投球フォームで投げられなくなる。その時間を短くすることによって考える数を減らすのが狙い。そっちの方がよかった。ポンポン、あまり無駄なこと考えずにやれた」

 ただ結局、それも実らず、ロッキーズ戦は5回途中、5安打、5失点でマウンドを降りている。