自由な即興演奏を引き出す土台にもなった、オール・アメリカン・リズム・セクション

 このベイシー・バンドのリズム陣は、オール・アメリカン・リズム・セクションと呼ばれ、称賛されたが、一方でこのリズムは、自由な即興演奏を引き出す土台にもなったことを見逃すわけにはいかない。実際、レスター・ヤングやハーシャル・エバンスといったベイシー・バンドのサックスの人気ソロイストは、グリーンたちにブレないリズムを要求し、そのことで彼らの微妙なひねりの効いたソロの味わいが際立つということがあった。

 もし、カンザス・シティ・ジャズの魅力はどこにあるかと言われたら、この規則正しいリズムの心地よさと、それと対比的な不思議な味わいをもったメロディーによる即興演奏の始まりである。そしてこれは、次の時代のジャズの大きな変革の準備段階でもあった。映画『カンザス・シティ』には、ベイシーはもとより、レスター・ヤング、コールマン・ホーキンス、ベン・ウェブスターといった当時の名テナー・サックスをはじめ、たくさんの伝説的なミュージシャンが登場し、それをジョシュア・レッドマンら撮影当時の第一線の新人が演じるという実に贅沢な作品だが、ただ、その中で一人だけこの時代に似つかわしくない人物が登場する。それは、当時まだ10代半ばの修行時代の無名のチャーリー・パーカーで、このパーカーこそ、約10年後にジャズの世界を大変貌させたカンザスシティが生んだ最大のジャズの天才であった。ジャズが踊る音楽から聴く音楽へ、そして、楽しむ音楽から、いささか複雑で難解な前衛音楽ともリンクするような世界へと、この圧倒的な即興演奏家が開いていくのである。

(文・青木和富)

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