来年度から保育士の子供が優先的に保育所に入れるよう、優遇措置が実施されることになりました。保育士不足への対応策ですが、この方法で保育施設不足は解消されるのでしょうか。

写真:アフロ

 働き方改革や子育支援など、様々な観点から保育施設の重要性が高まっていますが、この業界は慢性的な人手不足に悩まされており、これが待機児童問題の大きな原因のひとつといわれてきました。

 厚生労働省は、こうした状況に対応するため、保育士の子供を優先的に保育施設に入所できるようにする方針を固め、各自治体に要請を行いました。自身の子供を預ける場所がないという理由で職場を離れた保育士を呼び戻そうという試みですが、保育士の子供を優遇する措置については、以前から政府内で検討されており、一部の自治体では独自に制度の運用が行われていました。

一方、異なる自治体にある保育所への優先入所や、保育士が勤務する保育所への入所を制限するなど、事実上優遇措置を禁止する措置を取っている自治体もあることから、厚労省が調整に乗り出したわけです。

 保育士の資格を持っていても実際には働いていない保育士は全国で80万人いるとされ、こうした人たちの一部は制度の活用によって現場に復帰する可能性が出てきます。

 ただ、保育士が職場を離れてしまうのはそれだけが原因ではありません。保育士の資格がありながら保育士としての就業を希望しなかった人に対する調査において、保育士にならない理由のトップになったのは賃金でした。

 2016年における保育士の平均年収は327万円で、幼稚園の教員などと比較すると低い水準にとどまっています。しかし、子供を預かるという意味ではかなり責任の重い仕事ですから、賃金が責任に見合わないと考える保育士が多いのもうなずけます。

 また待機児童問題がなかなか解消されないのは人手不足だけが原因とは限りません。既存の保育施設の運営団体の中には、保育施設の設置条件を緩和すると、これまでの高い利益率が維持できないとして、保育施設の増加に反対しているところもあります。

 民間企業も含めて、もっと多くの事業者から参加を募れば、よりよい運営が実現できる可能性は多分にあります。また、公立保育施設と私立保育施設の職員の年収に約2倍もの開きがあるなど、業界全体の最適化も進んでいません(同じ保育士の仕事でも公務員の場合には、年収が2倍程度になるケースが多いといわれています)。

 子育ての問題は国民全体の問題ですから、保育士の人手不足にどう対処するのか、もっと国民的な議論が必要でしょう。

(The Capital Tribune Japan)